マーケティングが止まったらSPARKLE 本について

壁 02 決まらないテーマ:価格読む時間 約7分更新 2026年10月5日

値引きは、どれくらい重いのか

三行で言うと
  1. 値引きした分は、一台ごとに残るお金(限界利益)から、まるごと引かれる。
  2. 一割の値引きで同じ利益を残すには、台数をかなり増やす必要がある。増えた台数をこなす人の時間も要る。
  3. 理由を書けない値引きは、顧客と販売パートナーの頭に「待てば下がる」を残す。

1一台売れると、いくら残るのか

出ていくお金は二つに分けます。売れた分だけ増える費用(変動費)と、売れても売れなくてもかかる費用(固定費)。売上から変動費を引いた残りが、限界利益です。一台売れるごとに残るお金で、これを積み上げて固定費を超えた分が、会社の利益になります。

業務用の洗浄機で、仮に置きます。本体300万円、変動費210万円(材料と組み立て、設置の実費、代理店への手数料)。一台の限界利益は90万円。年に20台で、1,800万円です(数字は説明のための仮定です)。

2一割の値引きの重さ

値引きしても、部品の費用も、定価で決まる手数料も下がりません。下がった分は、まるごと限界利益から引かれます。

  • 一割(30万円)引くと、一台の残りは90万円から60万円。三分の一が消える
  • 年に1,800万円を残し続けるには、20台ではなく30台が要る
  • 1%(3万円)でも、一台の残りは90万円から87万円に減る
同じ1,800万円を残すには、20台が30台になる (本の図9-3)PNGSVG

値引きで注文が1.5倍になるか。増えた台数を、設置する人がこなせるか。そこまで数えて、初めて値引きの損得が見えます。

3その場で痛む人が、商談の席にいない

値引きの痛みは、立場で違います。

立場値引きで起きること
顧客お金が軽くなる(ほかの心配は減らない)
販売パートナー(手数料が定価で決まる形)痛まない
営業(受注の金額で見られている)受注は受注
メーカーまるごと持つ
値引きで痛むのは、A社だけ (本の図3-4)PNGSVG

その場で痛む人が、商談の席に一人もいません。 「値引きしないと」が会議で言いやすいのは、そういう構造だからです。営業の担当者を責める話ではありません。構造を変える話は、決裁の話です。

なお、販売店が仕入れて売る形では、逆になります。値引きはまず販売店の粗利から出るので、販売店は顧客に引く前に、メーカーに仕入れ値の引き下げを求めてきます。

4あとに残る影響

一度300万円を270万円にして売ると、その顧客の基準は270万円になります。次に買うときも、知り合いに話すときも。販売パートナーの頭の中にも同じ基準が残ります。理由を書けない値引きが続くと、顧客も販売パートナーも「待てば下がる」と覚え、定価の意味が薄くなります。

無料の点検や消耗品を付けたくなることもあります。それも値引きと同じ物差しに当てます。限界利益を削るか。人の時間を使うか。そして、その点検の基準価格を下げないか。

5値引きの実績を、一覧にする

決裁の材料になるのは、値引きの実績です。この一年、何件、いくら引き、理由は何で、誰が言い出し、そのあとどうなったか。並べると、理由を書けなかった値引きや、引いても止まった案件が見えてきます。値引きが決め手にならなかった案件がある、ということです。

やりがちな間違い

「1%くらいなら」と軽く見る。一台の残りから見ると、価格の何倍にも響きます。
無料のサービスを、値引きではないと思う。人の時間とお金を使い、その商品の基準価格も下げます。
決まりのないまま、その都度決める。毎回の値引きが、次の案件の出発点になります。

A社の場合

架空の会社の例

A社の社長は、値引きの実績の一覧を見て、決まりを置きました。理由を見積書に書ける値引きは、営業部長の判断でよい。期限で急がせる値引きと、理由を書けない値引きは、やらない。マーケティング課長の早川さんは、その決まりを一枚にして、代理店の担当者に渡しました。代理店が一番先に聞くのは、「どこまで引けますか」だからです。

ほかの業種なら

A社 業務用の洗浄機

値引きしても下がらない費用部品、設置の実費、定価で決まる手数料
値引きのあとに残りやすい基準顧客と代理店の「次もこの値段」
値引き以外で応える例支払いの時期、日程の優先

B社 建材

値引きしても下がらない費用材料、配送
値引きのあとに残りやすい基準販売店が仕入れ値の引き下げを求める出発点
値引き以外で応える例施工の説明の同行

C社 業務用のソフト

値引きしても下がらない費用導入を支える人の時間
値引きのあとに残りやすい基準毎月の利用料の値引きが、更新のたびに基準になる
値引き以外で応える例移行の作業の支援

D社 計測の機器

値引きしても下がらない費用部品、据え付けと校正の実費
値引きのあとに残りやすい基準商社の「言えば引いてくれる」
値引き以外で応える例校正の初回分を、理由を書いて相殺

A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。

理解を確かめる

問1一台の限界利益が90万円の商品で、30万円の値引きをしました。同じ利益の合計を残すには、台数を何倍にする必要があるでしょうか。答えを見る

1.5倍です。一台の残りが60万円になるので、90÷60=1.5。20台なら30台が要ります。

問2「値引きしないと決まらない」が会議で言いやすいのは、なぜでしょうか。答えを見る

その場で痛む人が、商談の席にいないからです。顧客は軽くなり、手数料が定価で決まる販売パートナーは痛まず、受注の金額で見られる営業にとっても受注は受注。まるごと持つのはメーカーです。

やってみる

自分の会社の一件で

型04 三者で比べる

型4「三者で比べる」。値引きを一つ取り上げ、自社・販売パートナー・顧客のそれぞれで、受け取るもの・払うもの・手間がどう変わるかを書きます。自社の欄には、一台の残りと、同じ利益に要る台数を書きます。

  • 何を決めたいか
  • 案ごとに比べる
  • やめ方
この型で整理する →A社の記入例を見る登録は要りません。入力した内容は、送信しません。

本では

本では 『選ばれる理由のつくり方』

この話が、人のあいだでどう進んだか。

第9章。営業会議で「値引きしないと、決まりませんよ」と言われた営業部長は、かつて自分も一割の枠を求めた人でした。

「値引きで注文が1.5倍になるか? 大西が1.5倍の台数をこなせるか?」

本について →

本の該当箇所:第3章 第4節、第9章 第6・7節

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