マーケティングが止まったらSPARKLE 本について

壁 02 決まらないテーマ:価格読む時間 約7分更新 2026年10月5日

値引きをしないと決まらないとき、「高い」は何と比べた言葉か

三行で言うと
  1. 「高い」「安い」を決めているのは、数字そのものより、顧客の頭の中にある基準。
  2. 同じ価格でも、同業の機械と比べれば高く、人を雇う費用と比べれば安く見える。どの基準を当ててもらうかは、名乗り方で変わる。
  3. 値引きを出す前に、心配の中身を聞く。中身が分かれば、価格ではなく条件で応えられる。

1「価格」と言うとき、指しているものが違う

会議で「価格」と言うとき、人によって指しているものが違います。

段中身決める人
メーカーの価格定価と、値引きの枠社長。相談を受けるのは営業
販売パートナーの条件取り次ぐだけか、仕入れて自分の名前で売るか契約の形による。仕入れて売る形なら、売り値は販売店が決める
顧客の総負担本体、設置、毎年の費用、社内の説得や覚える手間顧客
早川さんが手を入れられるのは、三段めの見せ方 (本の図9-1)PNGSVG

顧客が「高い」と言うとき、指しているのは三段めの総負担です。マーケティング担当者は価格そのものを決められませんが、総負担の見せ方と、価格を議論するための材料は、担当範囲で整えられます。

2頭の中の基準(参照価格)

顧客の頭の中には、価格を比べるための基準があります。前に買ったときの価格。ほかで見た価格。会社から言われている予算。これを参照価格と呼びます。基準より安いときの喜びより、基準より高いときの抵抗のほうが、大きく出ると言われています。

業務用の洗浄機で考えます。本体が300万円。同業の洗浄機が280万円なら、それと比べた顧客には「20万円高い機械」に見えます。一方、洗い場にパートを一人増やすと年に132万円かかるとします(時給1,100円、一日5時間、年240日)。こちらを基準にした顧客には、毎年の費用を入れても「三年ほどで元が取れる買い物」に見えます(数字は説明のための仮定です)。

同じ価格が、基準によって、高くも安くも見えます。

3どの基準を当ててもらうか

基準は、名乗り方で変わります。「高性能の洗浄機です」と名乗れば、顧客は同業の洗浄機を基準にします。「人を探し続けるかわりに」と話を始めれば、人を雇う費用が基準になります。

基準は、販売パートナーの担当者の頭の中にもできます。「あのメーカーは、言えば引いてくれる」。一度そうなると、相談は毎回そこから始まります。大きく値引きした見積書は、「最初の価格は何だったのか」という疑いを呼ぶこともあります。

4値引きの前に、心配の中身を聞く

「値引きしないと、決まりませんよ」と言う営業の担当者に、「値引きはだめです」と返すだけでは、話はそこで止まります。聞き返したいのは、「顧客は、何が心配で価格を気にしているのか」です。

「高い」の中身が分かれば、値引き以外で応えられる (本の図9-4)PNGSVG
心配の中身価格のかわりに応えられること
導入で仕事が止まる日数下見と、止めずに入れる段取り
毎年いくらかかるか五年間の総額の表
故障したらどうなるか誰が最初に動くかを書いた紙。理由を書いた点検の相殺
支払いの時期支払いを設置の翌月末に、など条件で

値引きにつながるのは、「本体の価格そのもの」が心配の中身だったときだけです。

「高い」が、失敗への不安の言いかえになっていることもあります。変えたい気持ちはあるのに、うまくいかなかったときが怖くて、決めきれない。そのときに効くのは、値引きではなく、決めることの危険を小さくする手です。試しや、段階を分けた導入、故障したときに誰が動くかの約束。六つの問いでは「信頼」への答えです。

5「高い」を記録する

中身を知るには、記録が要ります。「高い」と言われた案件を、何と比べての言葉か、誰の言葉か(顧客本人か、販売パートナーの読みか)、そのあとどうなったか、で書いておきます。三件で足ります。

それでも、価値は分かっていても予算そのものが届かないことはあります。そのときに見直すのは、提供する範囲、入れる時期、支払いの分け方、あるいは相手にするセグメントそのものです。採算が合わないなら、その商談を見送るのも選択肢のうちです。

やりがちな間違い

「高い」を、そのまま本体の値段の問題として扱う。中身は、毎年の費用や止まる日数かもしれません。
「値引きはだめ」で返して、話を止める。心配の中身を聞き返さないと、営業は次も同じことを言います。
自分から同業との比較を誘う名乗り方をする。「高性能」と名乗ると、同業の価格が基準になります。

A社の場合

架空の会社の例

A社の見積書には本体の価格しか載っておらず、止まった工場長は「やっぱり、ちょっと高いかな」と言いました。けれども、同じ人が「毎年いくらかかるのか、結局よく分からなかった」「社長に説明できなくて」とも言っていました。A社は価格を変えず、五年間の総額の表をつけた見積書をつくりました。同業の280万円と比べられていた300万円は、人を一人増やす五年分と比べられる額になりました。

ほかの業種なら

A社 業務用の洗浄機

当てられがちな基準同業の洗浄機の本体価格
当ててほしい基準(例)人を一人増やす費用
「高い」の中身かもしれないもの毎年の費用、止まる日数

B社 建材

当てられがちな基準従来の断熱材の材料費
当ててほしい基準(例)職人の手間と工期まで入れた費用
「高い」の中身かもしれないもの慣れない施工で工期が延びること

C社 業務用のソフト

当てられがちな基準他社のソフトの月額
当ててほしい基準(例)今の入力と確認にかかる人の時間
「高い」の中身かもしれないもの切りかえの作業、二年めからの利用料

D社 計測の機器

当てられがちな基準同業の機器の本体価格
当ててほしい基準(例)手作業の測定にかかる人の時間
「高い」の中身かもしれないもの校正と保守の費用、手順書の書き直し

A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。

理解を確かめる

問1顧客が「高い」と言いました。最初に聞き返すとよいのは、どれでしょうか。A いくらなら決めますか B 何と比べて、何が心配ですか答えを見る

B。基準と心配の中身が分かれば、価格以外で応えられることがあります。A から始めると、値引きの交渉になります。

問2「高性能の洗浄機です」と名乗ると、顧客の基準はどうなりやすいでしょうか。答えを見る

同業の洗浄機の価格が基準になります。比べる相手を、人を雇う費用や「いまのまま」にしたいなら、名乗り方から変えます。

やってみる

自分の会社の一件で

型07 総額の見積もり

型7「総額の見積もり」。「高い」と言われた案件を一つ選び、本体・毎年の費用・止まる日数・入れていないものを書き、比べる相手(人を増やす、いまのまま)と並べて、月に直します。あわせて、その「高い」が誰の言葉で、何と比べた言葉だったかを書き添えます。

  • 総額(万円)
  • 合計に入れていないもの(先に書く)
  • 前提
  • 聞かれそうなこと三つと答え
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本では

本では 『選ばれる理由のつくり方』

この話が、人のあいだでどう進んだか。

第9章。第5章で聞いた工場長の言葉を、もう一度並べるところから始まります。

「やっぱり、ちょっと高いかなと思って」

本について →

本の該当箇所:第9章 第1・2・4・7節

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