マーケティングが止まったらSPARKLE 本について

壁 03 動いてくれないテーマ:約束と商品テーマ:優先順位と計画読む時間 約7分更新 2026年10月5日

「無料で見にいこう」と決める前に、誰の手間を数えるか

三行で言うと
  1. 無料のサービスを足して喜ばれ、あとで人が回らなくなる。めずらしくない成り行き。
  2. 採算の表に出てこない上限がある。人の日数。販売パートナーの手間も、同じ表に置く。
  3. 足す前に、顧客・自社・販売パートナーを一枚で比べる。始める前に、やめ方まで決める。

1「顧客のために」は、反対しにくい

「入れたあと誰も見にいかないから、使われなくなる。導入のあと三か月、月に一度、技術者が無料で様子を見にいこう」。もっともな案です。顧客に喜ばれることも、間違いないでしょう。

けれども、続けられなければ、会社が先に息切れします。「顧客のために」は、社内で反対しにくい言葉です。反対が出ないぶん、会社の側の確かめが抜けやすくなります。

2利益の表に出てこない上限:人の日数

技術者の給料は、売れても売れなくてもかかる固定費です。だから、訪問を増やしても、採算の表の数字はほとんど動きません。動くのは、日数です。

業務用の洗浄機の例で数えます(数字は仮定)。技術者二人が、設置・点検・修理のほかに新しいことに使えるのは、年に40日ほど。無料の訪問を一台三回・一回半日、年20台の全部につけると、30日。40日の四分の三が埋まります。

大西さんが見ていた壁の予定表 (本の図3-3)PNGSVG

残り10日では、下見の同行のような別の大事な仕事が入りません。足りない分は、残業か休日か、設置の準備を削ることで埋め合わされます。準備が手薄になれば設置の質が落ち、顧客に喜ばれるために始めたことが、めぐりめぐって顧客の価値を損ないます。

3販売パートナーにも、採算と手間がある

見落としやすい相手が、もう一つあります。販売パートナーです。導入後の様子見、故障の最初の電話、下見への同行。手数料が同じなら、担当者には手間だけが増えます。 手間だけ増える仕事は、かばんの底に沈みます。

何かを足す案には、「販売パートナーの仕事は増えるか。増えるなら、相手に何が残るか」の欄を置きます。そして、販売パートナーにとっての得を、顧客への価値の説明に混ぜないことです。別の列に書きます。

4足す前に、三者で比べる

案顧客が受け取るもの(効く問い)一台の利益人の日数販売パートナーの負担選ぶ前に知ること
全件に無料の訪問不安が軽くなる(信頼・継続)減る枠の四分の三予定の調整決める人が不安で止まっているのか
訪問を有料の追加に申し込んだ相手には大きい(継続)戻る、増える申し込み次第説明が増える何社が申し込むか
相手を絞って訪問不安の大きい相手には大きい(信頼)一部減る収まりやすい予定の調整不安の大きい相手はどこか
手順の一枚を現場に貼る覚えやすくなる(信頼)変わらない変わらないなし現場の人が何でつまずくか
故障の連絡先を一枚で渡す困ったときの行き先が分かる(信頼)変わらない変わらない最初の電話が来るなら増える故障の電話が今どこに行っているか
一割引くお金だけ軽くなる(対価)大きく減る変わらないなし決める人がお金で止まっているのか

(業務用の洗浄機の例。評価は説明のための仮のもの)

三者を同じ表に並べると、価値をなるべく残しながら、会社と販売パートナーの負担を軽くする手を探せます。 全員に同じものを足すのをやめて、価値を感じる相手に絞るだけで、三者とも無理のない形になることもあります。

右端の「選ぶ前に知ること」の列が、一番大事です。相手の困りごとに効く理由を説明できない項目は、提案を豪華に見せても、顧客の費用と判断の負担を増やすだけです。

5始める前に、やめ方を決める

足す前に、四つを確かめます。

  1. 誰の、何が、どれくらい軽くなるのか。その人が本当にそこで止まっていると、確かめたか
  2. 一台あたりの利益は、どう変わるのか
  3. 人や設備の枠に収まるのか。販売パートナーの仕事は増えるか
  4. やめたくなったとき、やめられるのか

四つめは、見落とされがちです。無料で始めたことを途中でやめると、顧客は「サービスが悪くなった」と感じます。一番かんたんなやめ方は、期限を先に切ることです。「導入後三か月まで」「今期に契約した相手まで」と最初に書いておけば、終わるときに取り上げた形になりません。

値引きと訪問は、顧客の側で軽くなるものが違う (本の図3-1)PNGSVG

やりがちな間違い

採算の表だけを見る。固定費の人の時間は、表に出ずに先に尽きます。
販売パートナーの手間を数えない。手数料が同じなら、手間だけが増えます。
期限なしで無料にする。やめるときに、始める前より評判が下がることがあります。

A社の場合

架空の会社の例

A社では、営業部長が「導入のあと三か月、月に一度、無料で見にいこう」と提案しました。技術者の大西さんは、壁の予定表から目を離さずに言いました。「年二十台で、三回ずつなら、六十回です。設置と重なる月は、回れません」。マーケティング課長の早川さんが三者で比べる一枚を出すと、社長は「全部につけたら、大西が回らん。それに、無料で三回行ったら、有料の点検が売れなくなるぞ」。案は消えたのではなく、どの相手につけるかが決まるまで、預かりになりました。

ほかの業種なら

A社 業務用の洗浄機

「無料で」の案の例導入後三か月の無料訪問
先に尽きそうな人の時間技術者の日数
期限の切り方(例)導入後三か月まで

B社 建材

「無料で」の案の例全現場への無料の施工指導
先に尽きそうな人の時間施工の説明に回る技術営業の時間
期限の切り方(例)最初の一現場まで

C社 業務用のソフト

「無料で」の案の例導入後の無料の個別サポート
先に尽きそうな人の時間導入を支える担当者の時間
期限の切り方(例)最初の一か月まで

D社 計測の機器

「無料で」の案の例初年度の無料の校正
先に尽きそうな人の時間校正の技術者の日数
期限の切り方(例)今期に契約した相手まで

A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。

理解を確かめる

問1無料の訪問を足しても、採算の表の数字があまり動かないのはなぜでしょうか。そのかわりに何が動くでしょうか。答えを見る

技術者の給料は固定費だからです。かわりに、技術者の日数が動き、先に尽きます。

問2無料のサービスを始める前に決めておくとよい「やめ方」の、一番かんたんな形は何でしょうか。答えを見る

期限を先に切ること。「導入後三か月まで」などと最初に書いておきます。

やってみる

自分の会社の一件で

型04 三者で比べる

型4「三者で比べる」。足したい案を一つと、別の案を二つ以上(相手を絞る、有料にする、紙一枚で済ませる、など)並べ、顧客・自社・販売パートナーの欄と、右端に「選ぶ前に知ること」を書きます。空欄のまま選ばれそうな案に、印をつけます。

  • 何を決めたいか
  • 案ごとに比べる
  • やめ方
この型で整理する →A社の記入例を見る登録は要りません。入力した内容は、送信しません。

本では

本では 『選ばれる理由のつくり方』

この話が、人のあいだでどう進んだか。

第3章。無料の訪問の案を聞いた技術者の大西さんは、壁の予定表を見たまま答えました。

「年二十台で、三回ずつなら、六十回です。設置と重なる月は、回れません」

本について →

本の該当箇所:第3章 第1・5・6・7節

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