1注文どおりに納めたのに
注文どおりの機械を、約束の日に、きちんと動く状態で納めた。ひと月後、現場の隅でカバーをかけられていた。教わった人が異動し、残った人は使い方が分からず、消耗品の頼み先も分からず、機械までの動線が人の動きとぶつかっていた。
落ち度はないように見えます。けれども、顧客が欲しかったのは機械そのものより、少ない人数でも現場が回る、という毎日でした。誰かの怠慢ではなく、ひと月後を誰の仕事にもしていなかった、それだけのことです。どこで「終わり」と数えるかを、社内で合わせます。
2商品を三つの層で見る
- 手に入れたい結果 少ない人数で、現場が毎日回ること
- 品物そのもの 本体、性能、大きさ、使い勝手
- 品物のまわり 導入、使い方の説明、消耗品の届け方、点検、修理、困ったときの相談先
会社の目は真ん中の層に向きますが、顧客の困りごとが起きやすいのは、外側の層です。 いつも外側とは限りません。本体の問題で使われなくなることもあり、そのときに直すのは真ん中です。
3約束を、作業の流れに直す
「製造を止めずに入れる」は、言葉にすれば一行です。毎回本当にするには、顧客の動きを時間の順に並べ、その下に会社の側の作業を、顧客に見える仕事と見えない仕事に分けて書きます。
| 時期 | 顧客の動き | 見える仕事 | 見えない仕事 | 顧客にとっての意味 |
|---|---|---|---|---|
| 契約の前 | 現場を見せる | 下見。搬入口、床、電源、今のやり方を残せるか | 下見の結果を決まった用紙で残す | 「当日に入らない」不安が減る |
| 二週間前 | 休業日を伝える | 設置の日と予備の日を書面で渡す | 技術者の日程を予備日も含めて押さえる | 製造の予定を組める |
| 設置の日 | 立ち会いは一人 | 運びこみ、設置、試運転。今のやり方は残す | 終わらなければ予備の日に | 終わらなくても、製造は続く |
| 次の朝 | いつもどおり出勤 | 全員に、三つの操作を教える。手順を壁に貼る | 教える内容を三つに絞っておく | 誰かが休んでも困らない |
| ひと月後 | 困りごとを話す | 様子を見る。消耗品の届け方を決める | 聞いた困りごとを開発と営業に回す | 使い続けられる |
(業務用の洗浄機の例)
この表は、一人で書きません。作業の欄は技術者の言葉で、マーケティング担当者が受け持つのは右端の「顧客にとっての意味」の列です。約束を言葉にした人がこの表から手を離すと、約束は現場で少しずつ欠けていきます。
4約束は、継ぎ目で欠ける
止まりやすいのは、人から人へ仕事が渡るところです。営業が下見で見たことが、技術者に伝わっていない。メーカーと代理店のあいだで、消耗品を届けるのがどちらか決まっていない。表の中で担当が変わるところに印をつけ、何を、どんな形で渡すのかを決めます。
継ぎ目では、言うことも食い違いやすくなります。営業が「休みの日に終わります」と言い切ったのに、当日、技術者が「場合によっては二日かかります」と言う。予備の日を先に伝えてあれば、同じ二日めでも、約束のうちです。
5その流れは、誰の仕事を何日増やすのか
表ができると、技術者は聞きます。「それ、年に何日だ」。
| 増える仕事 | 誰の | 一件につき |
|---|---|---|
| 下見の同行 | 技術者 | 半日 |
| 次の朝の立ち会いと説明 | 技術者 | 一日 |
| ひと月後の様子見 | (決める) | 半日 |
| 下見の日取りと立ち会い | 販売パートナーの担当者 | 半日 |
提案と負担は、同じ紙に置きます。 答えを用意していない提案は、日数を聞かれたところで止まります。収まるかどうかは件数で決まるので、対象を先に決め、たとえば「次の三件だけ」で、流れが回るかを見ます。
やりがちな間違い
A社の場合
架空の会社の例
A社のマーケティング課長、早川さんは、作業の流れの表を、技術者の大西さんと、カバーをかけられた一件を振り返りながら書きました。「下見は、誰が行くんだ」「次の朝も行くのか」。教える操作を三つに絞れば三十分で済み、壁に貼る紙があれば、あとで入った人にも見せられる。対象は人手が足りない工場だけ、まず次の三件だけで始めることを、大西さんと営業部長と決めました。
ほかの業種なら
A社 業務用の洗浄機
| 手に入れたい結果 | 少ない人数で洗い場が回る |
|---|---|
| 起きやすい継ぎ目 | 営業→技術者、メーカー→代理店(洗剤) |
| 次の朝にあたる場 | 全員に三つの操作 |
B社 建材
| 手に入れたい結果 | 工期どおりに、手間なく施工できる |
|---|---|
| 起きやすい継ぎ目 | 販売店→職人(施工の注意) |
| 次の朝にあたる場 | 最初の現場での施工の立ち会い |
C社 業務用のソフト
| 手に入れたい結果 | 受注の作業が、担当者に頼らず回る |
|---|---|
| 起きやすい継ぎ目 | 営業→導入の担当、導入の担当→使う人 |
| 次の朝にあたる場 | 使い始めの日の画面の説明 |
D社 計測の機器
| 手に入れたい結果 | 検査が、決まった時間で回る |
|---|---|
| 起きやすい継ぎ目 | 商社→技術者、技術者→検査員 |
| 次の朝にあたる場 | 最初の測定の立ち会い |
A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。
理解を確かめる
問1顧客の困りごとが起きやすいのは、商品の三つの層のどこでしょうか。答えを見る
一番外側の「品物のまわり」(導入、使い方の説明、消耗品の届け方、相談先など)。ただし本体の問題のときは、真ん中を直します。
問2約束を作業の流れに直した提案を出すとき、一緒に置くものは何でしょうか。答えを見る
負担。誰の仕事が、一件につき何日増えるか。
やってみる
自分の会社の一件で
型04 三者で比べる
型4「三者で比べる」。約束を一つ選び、作業の流れに直したときに、自社・販売パートナー・顧客のそれぞれで増える仕事と、受け取るものを並べます。担当が変わる継ぎ目に印をつけ、何を、どんな形で渡すかを書きます。
- 何を決めたいか
- 案ごとに比べる
- やめ方
本では
本では 『選ばれる理由のつくり方』
この話が、人のあいだでどう進んだか。
第8章。作業の流れの表ができると、技術者の大西さんは最初にこう聞きました。
「それ、年に何日だ」
本について →本の該当箇所:第8章 第1・2・4・5節