1帳簿の上では「完了」
この三年に入れた機械の記録を、消耗品の注文の記録と並べてみる。帳簿の上ではすべて「完了」なのに、注文の間隔があいているもの、止まっているもの、何も分からないものがある。
顧客にとっての価値は、使われたときに、はじめて本当のものになります。買ったときには、まだ約束のままです。
使い続けない理由は、不満とは限りません。教わった人が異動した。仕事の量が減った。消耗品が切れて、そのままになった。新しい責任者が前のやり方に戻した。どれも、検収の印にも、アンケートの点数にも出てきません。こちらから聞かなければ、分からないままです。
2「続く」を三つに分ける
| 使い続ける | 消耗品と保守 | 再購入(更新・増設) | |
|---|---|---|---|
| 誰が決めるか | 使う人、現場の責任者 | 現場の責任者、経理 | 決める人(社長、本社) |
| 兆しはどこに出るか | ひと月後の確認。使う人が一人に偏っていないか | 消耗品の納品の間隔、点検の実施 | 点検のときの機械の状態と、相手の事情 |
| 結果が分かるまで | ひと月 | 数か月〜一年 | 十年 |
(業務用の洗浄機の例)
契約や消耗品の注文が続いていても、使いこなされているとは限りません。使ってはいるが、一部の作業にしか使っていない。決まった一人しか触っていない。そういう顧客は、手放しはしなくても、次の更新や増設にはつながりにくくなります。「続いているか」だけでなく、「使いこなされているか」を見ます。
三つは、一つの「継続率」にまとめません。 会議で「継続率を上げよう」と言われたら、「どの継続ですか」と聞き返します。それだけで、やることが変わります。
設備の商売の利益は、二階建てです。本体の利益と、使われ続ければ入る消耗品と保守の利益。売って終わりの一台は、利益の半分を置いてきています。
3導入後の四つの時期
| 時期 | 起きやすいこと | 確かめること |
|---|---|---|
| 入れる | 思ったより大変、という後悔 | 予定どおり入ったか |
| 使い始める | 使い方が分からない。最初の一回で止まる | その朝、何人が自分で動かせたか |
| 使い続ける | 元のやり方に戻る。消耗品が切れる。担当が替わる | 使っているか、誰が使っているか、消耗品は足りているか |
| 次を決める | きっかけがない。効果を社内で説明できない | 人手や作業量がどう変わったか |
とくに目を配りたいのは、前の二つです。早い時期に止まると、「やっぱり、うちには合わなかった」という結論が先に出てしまいます。使う全員に、「自分にも使えた」という一回めをつくります。
はじめて使ったあとに、顧客が商品の価値を評価し直す段階があります。使い始めに様子を聞くのは、止まりを拾うためだけでなく、その評価し直しの中身を知るためでもあります。
4ひと月後の三つ
- 使っているか(毎日/ときどき/止まっている)
- 誰が使っているか(全員/決まった一人/分からない)
- 消耗品は足りているか
一番大事な兆しは、「使っているのが、決まった一人だけ」です。 その人が異動すれば、止まります。三つより増やしません。聞くのは販売パートナーの担当者でも、書くのはメーカーです(「代理店から、顧客の声を戻してもらうには」)。
やりがちな間違い
A社の場合
架空の会社の例
A社がこの三年に入れた六十台のうち、今も毎月洗剤の注文があるのは三十八台。十二台は間隔があいているか止まっていて、十台は記録から何も分かりませんでした。前に、洗い場の隅でカバーをかけられた一台がありました。教わった人が異動し、洗剤の頼み先が分からず、元の手洗いに戻っていたのです。A社は、代理店の担当者が訪問のついでに三つ聞き、A社が書く形で、ひと月後の確認を始めました。
ほかの業種なら
A社 業務用の洗浄機
| 「使い続ける」の兆し | 誰が使っているか(全員か一人か) |
|---|---|
| 消耗品と保守の兆し | 洗剤の注文の間隔、点検 |
| 「決まった一人」のおそれ | 教わった人が異動すると止まる |
B社 建材
| 「使い続ける」の兆し | 次の現場でも使っているか |
|---|---|
| 消耗品と保守の兆し | (追加の注文) |
| 「決まった一人」のおそれ | 施工を覚えた職人が抜けると戻る |
C社 業務用のソフト
| 「使い続ける」の兆し | 毎日ログインしている人数 |
|---|---|
| 消耗品と保守の兆し | 利用料の更新、追加の利用者 |
| 「決まった一人」のおそれ | 設定を知っている担当者が辞めると止まる |
D社 計測の機器
| 「使い続ける」の兆し | 毎日の測定に使っているか |
|---|---|
| 消耗品と保守の兆し | 校正と保守の契約 |
| 「決まった一人」のおそれ | 測定に慣れた検査員が異動すると止まる |
A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。
理解を確かめる
問1「継続率を上げよう」と言われました。最初に聞き返すとよいのは、何でしょうか。答えを見る
「どの継続ですか」。使い続けること、消耗品と保守、再購入は、決める人も時間も違うので、やることが変わります。
問2ひと月後の三つのうち、一番大事な兆しは何でしょうか。答えを見る
「使っているのが、決まった一人だけ」。その人が異動すると止まります。
やってみる
自分の会社の一件で
型10 小さく試す計画
型10「小さく試す計画」。次に納める一件だけで、ひと月後の三つを確かめる計画を書きます。誰が聞くか、誰が書くか、「決まった一人」に丸がついたら誰が何をするかまで。広げるかどうかは、その一件の結果を見てから決めます。
- 決めたいこと
- もとになる仮説と、正しければ見られるはずのこと
- 変えること
- 対象と期間
- 協力者と負担
- 見るもの(三段)
- 判断の条件(件数で。結果を見る前に)
- この試しでは確かめられないこと
- 途中でやめる条件
- 報告の約束
本では
本では 『選ばれる理由のつくり方』
この話が、人のあいだでどう進んだか。
第14章。検収の印のついた六十台の記録を、洗剤の注文と並べたところから始まります。第8章には、カバーをかけられた一台の話があります。
本について →本の該当箇所:第14章 第1〜4節、第8章 第1節