1同じ表から、三つの読み
三か月の試しが終わった判断日。同じ表を見て、三人が別のことを言います。
- 「資料は六件のうち五件で渡された。契約が一件。広げてよいと思います」
- 「下見の一件は、行ってみたら設置できなかった」
- 「六件だぞ。契約一件は、去年の同じ三か月と同じ数だ」
「広げてよい」は判断で、「去年と同じ数だ」は読みです。話がはじめから、事実と解釈で混ざっています。 まず全員で、事実だけを確かめます。
2一件ずつ並べ、分母を書く
数が少ないときは、一件を一行にします。
| 案件 | 資料 | 事前のメモ | 下見 | 見積書 | 時点の状態 | 相手の言葉 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 初回に渡した | 届いた | 済み | 総額の表つき | 契約 | 「五年の表を、そのまま社長に見せた」 |
| 2 | 初回に渡した | 届いた | 済み | 総額の表つき | 検討中 | 「繁忙期が明けてから」 |
| 3 | 初回に渡した | 条件の欄が一言だけ | 設置できず | 出していない | こちらから断った | — |
| 4 | 二回めに渡した | 下見のあと | 済み | 総額の表つき | 検討中 | 「人が一人決まりそうで」 |
| 5 | 二回めに渡した | 条件は空欄 | まだ | まだ | 保留 | 「時期が合わない」(又聞き) |
| 6 | 渡していない | 届いていない | まだ | まだ | 返事が途絶えた | 聞けていない |
(業務用の洗浄機の例)
道具ごとに、分母が違います。 「八割で使われました」と聞いたら、「何件のうちの八割ですか」とたずねます。資料は六件のうち五件、見積書は見積もり三件のうち三件、事前のメモは下見に進んだ四件のうち、条件まで埋まっていたのは二件。
分母は、すりかわることもあります。理由を聞けた案件だけで「費用が理由の見送りはゼロ」と言えば、良く見えます。聞けなかった件数も、事実の欄に書きます。
3上の三つと、下の三つ
報告の紙を、二つに分けます。
- 上の三つ(誰が書いても同じ):事実(数えたこと、見たこと)/計画どおりにできなかったこと/先に決めた条件との照らし合わせ
- 下の三つ(人で変わる):分かったこと/まだ仮説のこと/次に誰が何を確かめるか
上を全員で確かめてから、下へ進みます。
4計画どおりにできなかったことを、先に書く
試しは、たいてい計画どおりには進みません。協力者が一件だけ資料を使わなかった。裏を取る予定の記録が取れなかった。本人に聞く予定が又聞きになった。同じ時期に、別のことも始めていた。
これを、解釈の前に、事実として書きます。 協力者が「一件、使っていません。いつもの説明のほうが早かったので」と自分から言ってくれたなら、それは試しで一番値打ちのある一言です。言い出さなければ、六件のうち五件を六件のうち六件として数えるところでした。しかも「いつもの説明のほうが早い」は、それ自体が次に直すべき障壁です。
5報告は、境目で分ける
結果を報告するときは、うまくいったように見える読み方を選びたくなります。「ここまでは確かめられた。ここから先は、まだ分からない」と分けて出しておけば、次の試しは、その境目から組み立てられます。
数字の整理を AI に頼んだときも、順番は同じです。何を決めるための分析か。元の記録は何件で、抜けはないか。どこまでが事実で、どこからが推測か。整った文章で返ってきても、元の記録が六件なら、言えることは六件ぶんです。
やりがちな間違い
A社の場合
架空の会社の例
A社の判断日、マーケティング課長の早川さんは、六件を一件一行の表にして会議に出しました。営業部長、技術者、早川さんの読みは三つに分かれましたが、事実の欄を全員で確かめてから、先に決めた条件と照らし合わせました。総額の表つきの見積書は条件を満たし、資料は「修正してから広げる」に当たり、事前のメモは条件を満たしませんでした。
ほかの業種なら
A社 業務用の洗浄機
| 試した道具(例) | 資料、総額の表つきの見積書、下見の前のメモ |
|---|---|
| 一件一行で並べる単位 | 引き合い一件 |
| 事実に書く「できなかったこと」の例 | 資料を使わなかった一件 |
B社 建材
| 試した道具(例) | 施工の手順書、手間と工期の試算 |
|---|---|
| 一件一行で並べる単位 | 現場一件 |
| 事実に書く「できなかったこと」の例 | 手順書が職人に渡らなかった現場 |
C社 業務用のソフト
| 試した道具(例) | 移行の手順書、月々の費用の試算 |
|---|---|
| 一件一行で並べる単位 | 商談一件 |
| 事実に書く「できなかったこと」の例 | 試算を出す前に止まった商談 |
D社 計測の機器
| 試した道具(例) | 校正まで入れた見積書、試しの測定の手順 |
|---|---|
| 一件一行で並べる単位 | 引き合い一件 |
| 事実に書く「できなかったこと」の例 | 試しの測定ができなかった一件 |
A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。
理解を確かめる
問1「資料は八割で使われました」と報告されました。最初に何を聞きますか。答えを見る
「何件のうちの八割ですか」。道具ごとに分母が違い、少ない件数では一件で割合が大きく動きます。
問2協力者が「一件、資料を使わなかった」と申し出ました。どう扱いますか。答えを見る
解釈の前に、事実として書きます。その理由(いつもの説明のほうが早い、など)は、次に直す障壁の材料です。
やってみる
自分の会社の一件で
型11 結果の報告
型11「結果の報告」。試した案件を一件一行で並べ、上の三つ(事実/計画どおりにできなかったこと/先に決めた条件との照らし合わせ)を先に埋めます。下の三つ(分かったこと/まだ仮説のこと/次に誰が何を確かめるか)は、上を確かめてから書きます。
- 一件ずつ(一件を一行)
- 上1 事実(分母つき)
- 上2 計画どおりにできなかったこと
- 上3 先に決めた条件との照らし合わせ
- 別の説明
- 下1 分かったこと
- 下2 まだ仮説のこと
- 下3 次に誰が何を確かめるか
本では
本では 『選ばれる理由のつくり方』
この話が、人のあいだでどう進んだか。
第17章。判断日の会議で、営業部長は表を見て言いました。
「6件だぞ。三か月で。契約1件は、去年の同じ三か月と同じ数だ」
本について →本の該当箇所:第17章 第1・2・3節