1数えやすい数を、報告してきた
名刺の枚数と、資料請求の件数。数えやすいので、報告してきた。けれども、その二つが売上とどうつながっているのかは、報告のどこにもない。よくある形です。
資料請求が増えたのに、引き合いが増えないなら、考えられることは三つです。
- 対象が違う:資料だけ欲しい人、合わない相手が増えている
- 資料が、次の一歩を示していない:読んだあとに何をすればよいかが書いていない
- 資料請求という指標が、何を表しているのかが決まっていない
2何が起きたら、一件と数えるか
| 状態 | 何が起きたら一件と数えるか | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 問い合わせ | 名刺、フォーム、資料請求 | 数えやすい。対象外の人も入る |
| 引き合い | 相手の事情を、本人から直接聞けた | 定義を決めた日から数える |
| 下見・見積もり | 現場を見て、総額の表つきの見積書を出した | 相手が手間をかける行動。売上に近い |
| 契約 | 注文書 | — |
| 導入 | 使い始めた | 契約と時期がずれる |
| 継続使用 | ひと月後、全員が使っている | 売ったあとの話 |
(業務用の洗浄機の例)
定義は、一人で決めません。とくに「引き合い」のように、マーケティングから営業へ渡す境目の一件は、受け取る側の営業と合わせて決めます。片方だけで決めた定義は、渡した数と、受け取った側が「話になった」と思う数が食い違うもとになります。
割合を出すときは、分母にも気をつけます。同じ実績でも、分母を「入ってきた全部」にするか、「実際に連絡がついた分」にするかで、割合は倍にも半分にも見えます。報告では、割合の横に、何件のうちかを書きます。
3主な指標は、売上への近さで選ぶ
数えやすさでは選びません。相手が時間と手間をかける行動(たとえば、現場を見せる=下見)は、契約に近い指標です。言葉よりも、小さな行動で確かめる、のと同じ理屈です。
ただ、売上に近い指標ほど件数が少なく、月ごとには動きません。そのときは、手前の指標(引き合い)を毎月の補助に置き、近い指標は半年ごとに見ます。
広告そのものが受け持つのは、たいてい「自分の話か」という最初の問いだけです。広告から来た人が、総額のページや導入の流れを読んでから帰ったのか、最初の画面で帰ったのか。これは、広告を直すための数字で、引き合いの件数を広告だけの成績として読むと見誤ります。
4一件あたりの費用は、数え方で桁が変わる
同じ広告の、同じ一年でも、何を一件と数えるかで、一件あたりの費用は桁が変わります。
| 一件と数えるもの | 例(年60万円の広告) |
|---|---|
| 資料請求(年120件) | 一件 5,000円 |
| 狙う相手からの引き合い(6件) | 一件 10万円 |
| 見積もり(3件) | 一件 20万円 |
| 契約(1台) | 一件 60万円 |
(数字は説明のための仮定)
一つの数字になったとたん、それだけで決めたくなります。何を一件と数えるかがぶれていないことを確かめ、ほかの材料と一緒に読みます。
広告の運用を外に任せているなら、何を成果として教えるかに気をつけます。資料請求を成果に置けば、資料だけ欲しい人が熱心に集まります。
5指標を変えたら、一行残す
引き合いの定義を決めると、件数は前の年より減って見えることがあります。悪くなったのではなく、物差しが変わったのです。 前後を同じ成果として並べません。
| 変えた日 | これまでの定義 | 新しい定義 | 理由 | これまでの定義での数字 |
|---|
この一行があれば、良く見える指標へのすりかえではなく、学びによる見直しだと、あとから分かります。
やりがちな間違い
A社の場合
架空の会社の例
A社のマーケティング課長、早川さんは、毎月の報告に「資料請求 目標達成」と書いてきました。その十件がそのあとどうなったかは、書いたことがありませんでした。営業部長と話して、展示会とWebの成績は「下見まで進んだ件数」で見ることにし、件数が少ないので、毎月は引き合いを補助に置き、下見は半年ごとに見ることにしました。
ほかの業種なら
A社 業務用の洗浄機
| 数えやすい数 | 名刺、資料請求 |
|---|---|
| 売上に近い行動(例) | 下見で現場を見せる |
| 引き合いの定義の例 | 洗い場の事情を本人から聞けた |
B社 建材
| 数えやすい数 | カタログ請求、サンプル請求 |
|---|---|
| 売上に近い行動(例) | 図面を渡して拾い出しを頼む |
| 引き合いの定義の例 | 現場の条件を工務店から聞けた |
C社 業務用のソフト
| 数えやすい数 | 資料ダウンロード、無料の試用の登録 |
|---|---|
| 売上に近い行動(例) | 業務の聞き取りに時間をとる |
| 引き合いの定義の例 | 受注の流れを担当者から聞けた |
D社 計測の機器
| 数えやすい数 | カタログ請求 |
|---|---|
| 売上に近い行動(例) | 手持ちの部品で試しの測定を頼む |
| 引き合いの定義の例 | 検査の条件を担当者から聞けた |
A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。
理解を確かめる
問1資料請求は増えたのに、引き合いが増えません。考えられることを三つ挙げてください。答えを見る
対象が違う(合わない相手が増えた)。資料が次の一歩を示していない。資料請求という指標が何を表しているかが決まっていない。
問2引き合いの定義を決めたら、件数が前の年より減りました。悪くなったのでしょうか。答えを見る
分かりません。物差しが変わったからです。前後を同じ成果として並べず、変えた日と新旧の定義を一行残します。
やってみる
自分の会社の一件で
型09 接点の役割表
型9「接点の役割表」。接点ごとに「何が起きたら一件と数えるか」を書き、売上に近い行動を一つ選んで、主な指標にします。件数が少なければ、毎月見る補助の指標と、半年ごとに見る主な指標を分けて書きます。
- 接点ごとに
- 主な指標(売上への近さで選ぶ)
- 指標を変えたら(一行)
本では
本では 『選ばれる理由のつくり方』
この話が、人のあいだでどう進んだか。
第12章。早川さんの月次の報告に、資料請求のその後は一度も書かれていませんでした。営業部長は、その一覧を見たことがありませんでした。
本について →本の該当箇所:第12章 第7節、第17章 第7節、付録1