1結果を見てからの説明は、何にでもつく
差が小さくても「手応えはあった」。差が出なくても「時期が悪かった」。結果を見てから判断の線を引くと、どんな結果にも、もっともらしい説明がつきます。研究の世界でも、結果が分かってから仮説を組み立て直し、はじめからそう考えていたかのように報告することが、問題になっています。
先に書いた条件は、あとの自分たちへの歯止めです。
2確かめられる形に、仮説を書く
試しには、様子を見にいく試し(探索)と、仮説を確かめにいく試し(検証)があります。二つは混ぜません。確かめるつもりで始めたのに、結果が思わしくないと、「いろいろ分かったから」と見にいく試しだったことにしてしまうからです。
確かめる試しには、「もし正しければ、何が見られるはずか」まで書いた仮説が要ります。
- 「新しい資料は良い資料だ」→ 何が見られたら正しいのかが決まっていない。仮説になっていない
- 「止まっている理由は、毎年の費用が読めないことと、導入で止まる不安だ。正しければ、新しい見積書を出したあと、この二つの理由は出なくなるはず」→ 確かめられる
3線を、件数で書く
| 何について | 広げる | 直してから広げる | 広げない |
|---|---|---|---|
| 資料 | 初回の訪問で渡されたのが、全件か一件を除く全部 | 二回めまでに渡されたのが、半分を超える | 二回めまでに渡されたのが、半分以下 |
| 総額の表つきの見積書 | 見積もりの全件についている | ついていない見積もりがある | — |
| 障壁 | 見積もりのあとで、前と同じ理由が出たのが一件以下 | 二件以上で出た。中身を直す | — |
| 人の負担 | 下見が、平均で一件一日以内 | — | 一件一日を超えた |
(業務用の洗浄機の例。六件ほどの試しで)
割合ではなく、件数で書きます。 六件のうちの「八割」は、一件で大きく動くからです。障壁にも条件を置きます。道具が全部配られても、顧客が前と同じ理由で止まっていたら、広げる意味がありません。
4ほかの歯止め
- 対象を、選ばせない。 協力者が「この案件には使おう」と選ぶと、もともと決まりそうな案件にだけ使われる。期間中に来た全部を対象にする
- 実行できたかは、自己申告だけで数えない。 記録で数える、控えで数える、日付で数える、と決めておく
- 止まった理由は、同じ人が、同じ質問で聞く。 売った本人が聞くと、答えは「価格」に寄る
5条件は動かさない。指標は記録を残して変える
結果を見て、満たさなかった条件の線を、あとから動かしたくなることがあります。「メモは、条件の欄が埋まっていなくても、届いていればよかったことにしよう」。そうすると、先に条件を書いた歯止めを、自分で外すことになります。記録には、「満たさなかった」とそのまま書きます。
一方で、やってみて初めて、数えるべきものが分かることもあります。「資料を渡した数」ではなく「決める人に届いた数」を数えるべきだった、など。指標を見直すのは、学びのうちです。ただし、変えた前とあとを、同じ成果として並べません。 変えた理由、変えた日、新旧の定義、これまでの定義での数字を残します。良く見える指標へのすりかえと、学びによる見直しの違いは、記録が残っているかどうかです。
やりがちな間違い
A社の場合
架空の会社の例
A社のマーケティング課長、早川さんは、試しの一枚に判断の条件を件数で書き、始める前に社長にも見せました。三か月後、事前のメモは条件を満たしませんでした。早川さんは線を動かさず、「満たさなかった」と書いたうえで、線を引いた理由に照らして次を考えました。あわせて、「資料を渡した数」は「決める人が総額の表を見たと確かめられた数」に数え方を変え、変えた日と理由と、これまでの数え方での数字を一行に残しました。
ほかの業種なら
A社 業務用の洗浄機
| 確かめられる仮説(例) | 総額が読めれば、見積もりのあとで止まる理由が変わる |
|---|---|
| 件数で書く線の例 | 前と同じ理由が出たのが一件以下 |
B社 建材
| 確かめられる仮説(例) | 施工の手間が見えれば、採用されない理由が変わる |
|---|---|
| 件数で書く線の例 | 施工の手間を理由にした不採用が一件以下 |
C社 業務用のソフト
| 確かめられる仮説(例) | 移行の手間と二年めの費用が見えれば、契約の手前で止まらなくなる |
|---|---|
| 件数で書く線の例 | 移行を理由にした見送りが一件以下 |
D社 計測の機器
| 確かめられる仮説(例) | 校正まで入れた費用が見えれば、試しの測定のあとで止まらなくなる |
|---|---|
| 件数で書く線の例 | 校正の費用を理由にした見送りが一件以下 |
A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。
理解を確かめる
問1「新しい資料は、良い資料だ」。これは確かめられる仮説でしょうか。答えを見る
いいえ。正しければ何が見られるはずかが書かれていません。「この資料を使えば、前と同じ理由で止まる件が減るはず」のように書き直します。
問2結果を見たら、ある条件を少しだけ満たしませんでした。線を緩めてよいでしょうか。答えを見る
緩めません。「満たさなかった」と記録し、線を引いた理由に照らして次を考えます。数える物を変えるなら、次の期間から、理由と新旧の定義を残して変えます。
やってみる
自分の会社の一件で
型10 小さく試す計画
型10「小さく試す計画」。決めたいこと、仮説と「正しければ見られるはずのこと」、そして「広げる/直してから広げる/広げない」の線を、件数で書きます。書いた日付を入れて、始める前に、決める人に見せます。
- 決めたいこと
- もとになる仮説と、正しければ見られるはずのこと
- 変えること
- 対象と期間
- 協力者と負担
- 見るもの(三段)
- 判断の条件(件数で。結果を見る前に)
- この試しでは確かめられないこと
- 途中でやめる条件
- 報告の約束
本では
本では 『選ばれる理由のつくり方』
この話が、人のあいだでどう進んだか。
第16章・第17章。試しの一枚に入れた五つの歯止めと、三か月後の判断日に、満たさなかった条件をどう扱ったかが出てきます。
本について →本の該当箇所:第16章 第2・5節、第17章 第6・7節