1どちらにも筋が通っているから、決まらない
やることが二十を超えた会議。営業は「まず問い合わせを増やすべきだ。話が来なければ何も始まらない」。マーケティングは「入口を広げる前に、見送りを減らすほうが先だ」。
どちらの言い分にも筋が通っています。だから、決まりません。足りないのは、順番を決めるための共通の判断基準です。
2五つに分けて書く
議論を始める前に、次の五つを分けて書きます。
- 目標 何を、いつまでに、どれだけ
- 事実 今、実際に起きていること。数えたこと、見たこと、聞いたこと
- 原因の仮説 なぜそうなっているのかの、まだ確かめていない説明
- 施策 何をするのか
- 学ぶこと やってみると何が分かるのか
「問い合わせを増やす」は、目標でしょうか、施策でしょうか。会社が本当に得たいのは、相手に商品が入り、使い続けてもらうことです。問い合わせは、その途中の通り道です。
3割れているのは、施策の手前
| 増やす案(問い合わせを増やす) | 減らす案(導入の障壁を減らす) | |
|---|---|---|
| 原因の仮説 | 知られていないから、引き合いが少ない | 引き合いはあるのに、導入の不安と費用の見通せなさで止まっている |
| 仮説の根拠 | 営業の実感 | 見送った数社の声、販売パートナーへの聞き取り |
| 正しければ、見られるはずのこと | 引き合いのなかった会社は、名前を知らない | 止まる人は、見積もりのあとに集まっている |
| 施策 | 広告、展示会の追加 | 総額の表つきの見積書、下見の同行、設置の流れ |
| 学ぶこと | どこから引き合いが来るのか | 見送りの本当の理由。約束は通じるのか |
表にすると、二人の違いは、施策ではなく、その手前の原因の仮説にあったことが分かります。「知られていない」のか、「止まっている」のか。
4「正しければ、何が見られるはずか」
仮説を確かめられる形に書くと、事実を当てられます。減らす案が正しければ、止まる人は見積もりのあとに集まっているはず。ところが数えてみると、見積もりの前と後で、同じくらい止まっていた。減らす案の仮説だけでは、説明できない半分が残ります。
仮説は、たいてい、どちらかが全部正しいという形にはなりません。 だから、言い負かす相手ではなく、一緒に確かめる相手になります。
5目標そのものを、営業と合わせる
目標の台数を言われても、営業が受注の金額で見られていれば、話はかみ合いません。「中小の会社で四台増やすより、大きい会社で一台のほうが、成績は上がる」。
目標は、三つがそろって、初めて営業と同じものになります。
| 合わせること | 合わせていないと起きること |
|---|---|
| 誰の数字か(どのセグメントへの販売か) | 別の大きな一件で、目標に届いたように見える |
| 何で数えるか(台数か、金額か。両方か) | 値引きで台数だけが増える |
| 途中で何を見るか(引き合い、見積もり、契約の件数を毎月) | 引き合いの数だけが成果として報告される |
台数だけを言われた営業は、台数の出やすいところへ動きます。それは営業の責任ではありません。
評価の決め方を変える話は、営業の責任者の担当範囲の中でも一番触られたくないところです。材料(事実・選択肢・影響・判断してほしい点)をそろえて渡し、責任者が自分で出す形にすると、通りやすくなります。
やりがちな間違い
A社の場合
架空の会社の例
A社の会議で、営業部長は「引き合いが細ったら、どうする」と聞きました。マーケティング課長の早川さんは、「前の年と、毎月並べます。細り始めたら、その月に言います」と答えました。この問いは、目標の三つめ(途中で何を見るか)に入りました。営業の評価の見方を変える話は、営業部長が「これは、俺から出す。金額も見続ける、という条件つきでな」と引き取りました。
ほかの業種なら
A社 業務用の洗浄機
| 増やす案の仮説 | 知られていない |
|---|---|
| 減らす案の仮説 | 導入の不安と費用の見通せなさで止まる |
| 目標の「誰の数字か」 | 人手が足りない工場への販売台数 |
B社 建材
| 増やす案の仮説 | 工務店に名前が挙がっていない |
|---|---|
| 減らす案の仮説 | 施工の手間の不安で採用されない |
| 目標の「誰の数字か」 | 狙った工務店での採用件数 |
C社 業務用のソフト
| 増やす案の仮説 | 検索で見つけてもらえていない |
|---|---|
| 減らす案の仮説 | 移行の手間と二年めの費用で止まる |
| 目標の「誰の数字か」 | 狙った卸売の会社との契約数 |
D社 計測の機器
| 増やす案の仮説 | 商社の担当者が名前を挙げていない |
|---|---|
| 減らす案の仮説 | 校正の費用と手順書の書き直しで止まる |
| 目標の「誰の数字か」 | 狙った部品メーカーへの販売台数 |
A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。
理解を確かめる
問1営業とマーケティングで意見が割れたとき、最初に分けて書くとよいのは、どこでしょうか。答えを見る
原因の仮説。施策の手前で、なぜそうなっているのかの説明が違っていることが多くあります。仮説ごとに「正しければ、何が見られるはずか」を書きます。
問2目標を営業と同じものにするために、合わせる三つを挙げてください。答えを見る
誰の数字か、何で数えるか、途中で何を見るか。
やってみる
自分の会社の一件で
型12 一つの計画
型12「一つの計画」。いま割れている話を一つ選び、目標・事実・原因の仮説・施策・学ぶことの五つに分けて書きます。仮説には「正しければ、何が見られるはずか」を一行ずつ添えます。
- 戦略
- 目標
- 課題と仮説
- 施策と「なぜなら」
- お金と人
- 見るもの
- 見直す日と条件
- やらないこと(いつまで)
- 決める前に見せた記録
本では
本では 『選ばれる理由のつくり方』
この話が、人のあいだでどう進んだか。
第15章。壁に貼った二十を超える一覧を前に、社長が聞きました。
「で、来期は、何からやるんだ」
本について →本の該当箇所:第15章 第1・2・3節