1決められないから、そろえる
価格を決めるのは、たいてい社長や営業の責任者です。マーケティング担当者が決められるのは、顧客の総負担の見せ方と、価格を議論するための材料までです(「値引きをしないと決まらないとき、『高い』は何と比べた言葉か」)。
それでも、仕事は上に上げたところで終わりません。判断の材料をそろえ、試す範囲を小さくし、別の案を用意するところまでが受け持ちです。
2四つの中身
| 欄 | 書くこと |
|---|---|
| 事実 | 数えたこと、見たこと、聞いたこと。一件あたりの費用、件数、記録で確かめたこと |
| 選択肢 | 二つ以上。「何もしない」「今のまま」も入れてよい |
| 影響 | 選択肢ごとに、同じ物差しで。一台の残り、顧客の見え方、人の時間 |
| 判断してほしい点 | 決める人に、何を決めてほしいのかを一文で |
結論ではなく、判断の材料を出します。 結論だけを持っていくと、会議は賛成か反対かで終わります。
3例:導入の手厚い支えを、価格にどう入れるか
業務用の洗浄機のメーカーで、下見・休業日の設置・次の朝の説明に、一件あたり12万円かかると分かったとします(数字は仮定)。
| 欄 | 中身 |
|---|---|
| 事実 | 一件あたり12万円(出張の実費と休日の手当、資料)。技術者の給料は固定費なので入れない。これは約束の中心にある |
| 選択肢 | ① ただで付ける(顧客は300万円、一台の残りは78万円) ② 価格に含める(312万円、残りは90万円) ③ 別料金で選んでもらう |
| 影響 | ① 残りが一割以上減る ② 見積書の額は上がるが、総額の表と見せれば五年で3%ほど ③ 選ばなかった顧客には、約束を果たせない |
| 判断してほしい点 | 約束の中心にあるものを、選択肢にするかどうか |
4通らなかったときの代わりの案
決める人が首を縦に振らないこともあります。そのときのために、代わりの案を、先に用意しておきます。 たとえば、全社で変えるかわりに一部の案件から試す。成績の見方は変えず、月に一度の場で数字を並べるだけにする。小さく、戻しやすい案です。
誰が出すかも考えます。営業の評価の決め方のように、相手の担当範囲の中でも触られたくないところに関わるなら、その責任者が自分で出す形のほうが通りやすくなります。
5決まったら、販売パートナーに渡す
決まったことは、販売パートナーにも一枚で渡します。たとえば値引きの決まり。販売パートナーの担当者が一番先に聞くのは、「どこまで引けますか」だからです。
やりがちな間違い
A社の場合
架空の会社の例
A社の社長は、上の一枚を見て、②を選びました。営業部長は見積書の額が上がることを気にしましたが、マーケティング課長の早川さんは、代理店の担当者を通して総額の表を見た工場長が「これなら社長に出せる」と言ったことを伝えました。早川さんが決めたことは、一つもありません。それでも、この一枚がなければ、会議は「値引きするか、しないか」で終わっていました。
ほかの業種なら
A社 業務用の洗浄機
| 判断してほしい点の例 | 導入の手厚い支えを、価格に含めるか |
|---|---|
| 決める人 | 社長、営業部長 |
| 事実として数えるもの | 一件あたりの実費、下見の件数と契約の数 |
B社 建材
| 判断してほしい点の例 | 施工の説明の同行を、標準にするか別料金にするか |
|---|---|
| 決める人 | 社長、営業の責任者 |
| 事実として数えるもの | 同行一回あたりの時間と費用、採用率 |
C社 業務用のソフト
| 判断してほしい点の例 | データの移行を、初期費用に含めるか |
|---|---|
| 決める人 | 社長、事業の責任者 |
| 事実として数えるもの | 移行一件あたりの作業時間 |
D社 計測の機器
| 判断してほしい点の例 | 初回の校正を、価格に含めるか |
|---|---|
| 決める人 | 社長、営業の責任者 |
| 事実として数えるもの | 校正一回あたりの実費、技術者の日数 |
A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。
理解を確かめる
問1次の会議に出す一枚に入れる四つを、挙げてください。答えを見る
事実、選択肢、影響、判断してほしい点。
問2選択肢を一つだけ書いて出すと、何が起きやすいでしょうか。答えを見る
賛成か反対かの話になり、比べて決める材料になりません。「何もしない」も含めて、二つ以上を同じ物差しで並べます。
やってみる
自分の会社の一件で
型07 総額の見積もり
型7「総額の見積もり」で顧客から見た総額を整えたうえで、会議に出す一枚を、事実・選択肢・影響・判断してほしい点の四つの欄で書きます。最後に、通らなかったときの代わりの案を一行書き添えます。
- 総額(万円)
- 合計に入れていないもの(先に書く)
- 前提
- 聞かれそうなこと三つと答え
本では
本では 『選ばれる理由のつくり方』
この話が、人のあいだでどう進んだか。
第9章。一枚を見た社長は、短く決めました。
「込みにしろ。選ばせるな。選ばなかった工場には、約束にならん」
本について →本の該当箇所:第9章 第2・9節、第1章 第7節、第15章 第3節