マーケティングが止まったらSPARKLE 本について

はじめに読む 01テーマ:優先順位と計画読む時間 約6分更新 2026年10月5日

マーケティングの仕事は、どこからどこまでか

三行で言うと
  1. マーケティングは、広告や販促だけの仕事ではない。顧客が「これなら見合う」と判断できるように、価値をつくり、届け、導入のあとも支える仕事。
  2. ただし、全部を自分で変える仕事でもない。顧客の側から全体を見て、止まっている場所を事実で示す。
  3. 変えるのは、その場所を受け持つ人と一緒に。自分の担当範囲/誰かと合わせる/決裁が要る、の三つに分けて進める。

1「広告か、営業か」で止まる会議

契約が増えない。会議では、たいてい二つの声が出ます。「問い合わせの質が悪い。広告が弱いからだ」「問い合わせは渡している。そのあとどうなったかが戻ってこない」。

どちらも、手元にある材料だけで原因を探した結果です。見えるところから直したくなるのは自然なことですが、材料が足りないまま原因を決めようとすると、話は誰の責任かに向かいます。

聞くことを、「顧客は、どこで止まっているのか」に変えます。すると探す範囲が広がり、関わる全員で確かめにいける話になります。

営業とマーケティングで、優先することが食い違うのは、めずらしいことではありません。受け持つ数字も、見ている材料も違うからです。だからこそ、どちらの責任かを決めるより先に、顧客の側の問いに置きかえます。

同じ一件を、会社と顧客は別のものとして見ている (本の図1-1)PNGSVG

2顧客が払っているのは、代金だけではない

顧客が見比べているのは、受け取る価値と、払うものの全部です。

  • お金 本体の代金と、毎年かかる費用
  • 時間 調べる、比べる、導入を待つ
  • 手間 社内を説得する、やり方を変える、使い方を覚える
  • 不安 うまくいかなかったら、どうするか

見積もりのあとで止まる理由が、毎年の費用や、設置で仕事が止まる日数や、故障したときの不安にあるなら、本体の価格を下げても、その三つは一つも減りません。 広告の出来とも、営業の熱意とも、別のところです。

だから、マーケティングの範囲は「伝える」より広くなります。米国マーケティング協会の定義も、マーケティングを価値のある提供物を「つくり、伝え、届け、交換する」活動としています。日本マーケティング協会が2024年に改めた定義も、伝えることだけをマーケティングとは呼んでいません。

3「どうやって」の前に、「誰に、何を」

  • 戦略 誰に、何を約束するかを決めること
  • 施策 その約束を形にして届けること(商品とサービスの中身、価格、販売経路、伝え方、導入後の支え)

会議は、たいてい逆の順で進みます。「動画をつくろう」「展示会を増やそう」というどうやっての話から始まり、誰に何を約束するのかは決まらないままです。

仮でいいので、「誰に、何を」を一文にしてみます。当たっているかは、あとで確かめます。一文があるだけで、ばらばらだった施策の直し方がそろいます。そして、誰に、を決めることは、誰を後回しにするかを決めることでもあります。

4全体を見る。ただし、全部を自分で変えない

見積書は営業、設置は技術者、代理店との取り決めは営業部長と社長。マーケティング担当者が自分で動かせるのは、多くの場合、広告やWebや資料のような「伝える部分」です。

全体を見ることと、全部を自分で変えることは、別の話です。 変えたいことを、三つに分けます。

区分例マーケティング担当者がやること
自分の担当範囲で進められる問い合わせの文面と、展示会で聞かれた質問を集める。資料の説明の順を直す目的と、何を見るかを決めて進め、結果を共有する
誰かと合わせて進める止まった案件を営業と振り返る。見積書に毎年の費用を載せる相手の負担と受け持ち、期間を先に聞き、一件から試す
決裁や契約の確認が要る故障時の対応を代理店と取り決める。価格や値引き事実、選択肢、影響、判断してほしい点をそろえて出す

どの区分に入るかは、役職では決まりません。会社ごとの権限と、契約によります。

やりがちな間違い

担当範囲の外を、見ないことにする。止まっている場所が見積書にあるのに、広告だけを直し続けることになります。
全部を自分で直そうとする。他部署の担当範囲に黙って手を入れると、確かめる前に関係が壊れます。
決裁が要ることを、上げて終わりにする。判断の材料をそろえ、試す範囲を小さくし、別の案を用意するところまでが仕事です。

A社の場合

架空の会社の例

業務用の洗浄機をつくるA社(架空)。この一年、工場の事情まで聞けた相談が100件、見積もりが60件、契約は20台。マーケティング課長の早川さんは広告をつくり直し、営業部長の黒田さんは訪問を増やしましたが、契約は変わりませんでした。見積もりのあとで返事をしなくなった工場の気がかりは、設置で止まる日数、毎年の費用、故障したときの対応。どれも、広告の担当範囲の外でした。

ほかの業種なら

A社 業務用の洗浄機

マーケティング担当者が動かせるもの広告、Web、展示会、カタログ
担当範囲の外にあるかもしれない止まり方設置の段取り、毎年の費用、故障時の対応

B社 建材

マーケティング担当者が動かせるものカタログ、施工事例のページ、展示会
担当範囲の外にあるかもしれない止まり方施工の手間、工期への影響、販売店の在庫

C社 業務用のソフト

マーケティング担当者が動かせるものWeb、資料、オンラインの説明会
担当範囲の外にあるかもしれない止まり方データの移行、二年めからの利用料、導入の支援

D社 計測の機器

マーケティング担当者が動かせるものカタログ、展示会、技術資料
担当範囲の外にあるかもしれない止まり方校正と保守の費用、検査の手順書の書き直し

A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。

理解を確かめる

問1契約が増えない理由を探す会議で、最初に変えるとよいのは、どれでしょうか。A 広告の文面 B 営業の訪問の回数 C 会議で聞くこと答えを見る

C。「広告か、営業か」ではなく、「顧客は、どこで止まっているのか」と聞きます。探す範囲が広がり、関わる全員で確かめにいけます。

問2「故障したときの対応を、代理店と取り決める」は、三つの区分のどれに入ることが多いでしょうか。答えを見る

決裁や契約の確認が要る。マーケティング担当者は、事実・選択肢・影響・判断してほしい点をそろえて出します(ただし、会社ごとの権限と契約で変わります)。

やってみる

自分の会社で

自分の会社で「変えたいこと」を三つ書き出し、上の表の三つの区分に分けてみてください。「誰かと合わせて進める」に入ったものから、一件だけ試します。

本では

本では 『選ばれる理由のつくり方』

この話が、人のあいだでどう進んだか。

第1章。A社の月例の会議で、社長が二人の顔を見て言った一言から、一年が始まります。

「で、どっちなんだ」

本について →

本の該当箇所:第1章 第1・3・5・7節

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