1六つの問い
| 問い | 顧客が確かめていること |
|---|---|
| 関係 | 自分に関係のある話か |
| 効果 | 何がよくなるのか |
| 対価 | 払うお金と手間に見合うのか |
| 入手 | 無理なく買い、導入できるのか |
| 信頼 | 信じてよいのか |
| 継続 | 使ってよかったか。使い続け、次も選ぶか |
自分が買う側になった場面で考えると、分かりやすくなります。会社の複合機の入れ替えを任されたとします。紙詰まりが増えて、初めて案内が自分の話になる(関係)。止まらなくなる、スキャンが速くなる(効果)。リース料とトナー代で月々いくらか、入れ替えの日に仕事はどれだけ止まるか(対価)。納品はいつで、設定は誰がやるのか(入手)。故障したら、販売店はすぐ来てくれるのか(信頼)。次の入れ替えでも、同じところに頼むか(継続)。
2順番ではなく、止まる場所を見る
数えながら確かめている人はいませんし、順番も決まっていません。それでも、どこか一つで大きく止まれば、話はそこで進まなくなります。 上司に「まだ使えるだろう」と言われれば関係で止まり、月々の費用が今より上がるなら対価で止まります。
止まり方には重さの違いもあります。答えがなければ話が終わる問いと、ほかの良さで補える問いです。
使うときの注意が二つあります。
- 六つの問いは点検のための枠です。顧客がこの順に進む、という法則ではありません。
- 一つの気がかりが、二つ以上の問いにまたがることがあります。「設置で何日止まるのか」は、対価にも入手にも関わります。
3同じ会社の中でも、人によって止まる場所が違う
見積もりのあとで返事をしなくなった工場を、二人の目で見ると、こうなります。
| 問い | 工場長 | 顧客の社長 |
|---|---|---|
| 関係 | ○ 洗い場の人手が足りない | × 「いまのままで回っている」 |
| 効果 | ○ 洗う時間が短くなる | ? |
| 対価 | × 毎年の費用と、止める日数が分からない | ? |
| 入手 | × 設置の段取りが分からない | ? |
| 信頼 | × 故障したとき、誰が動くのかが分からない | ? |
| 継続 | — まだ買っていない | — |
○=進んでいる ×=止まっている ?=材料が届いていない
工場長は対価・入手・信頼で止まり、効果はすでに伝わっています。社長は関係で止まり、残りの問いの材料は手元に届いていません。
このとき、効果(洗う時間の短さ)を強く打ち出す広告をつくり直しても、すでに伝わっていることを、もう一度伝えることになります。
4六つの手前の「入口」と、「いまのまま」
六つの問いの手前に、入口があります。設備を入れ替えようと考えたときに、名前が浮かぶか。代理店の担当者が、名前を挙げてくれるか。ここで外れると、六つの問いは始まりません。
BtoB の買い物は、何年かに一度です。ある時点で買う時期にいる会社は一部で、多くは、まだその外にいます。入口は、この「いまは買わない、多くの会社」に向けた仕事でもあります。きっかけが来たときに、最初に名前を思い出してもらえるかどうかです。
もう一つ。顧客が比べている相手は、ほかのメーカーとは限りません。変えない、という選択肢(「いまのまま」)も、いつも候補に入っています。
「いまのまま」には、二つあります。今のやり方で足りていて、本当に急ぐ必要がない場合。変えたいのに、失敗が怖くて決めきれない場合です。六つの問いで言えば、前者は主に「関係」や「対価」で、後者は「信頼」で止まっています。払うもので言えば「不安」です。打つ手が違うので、見送りの記録では、二つを分けて書きます。
54P と重ねて使う
会社が動かせるものの整理として、商品・価格・流通・販売促進の4Pがあります。4Pは会社の側から、六つの問いは顧客の側から見ます。六つの問いで止まっている場所を見つけ、4Pで直すところを探す、と重ねて使います。
やりがちな間違い
A社の場合
架空の会社の例
A社のマーケティング課長、早川さんが同じ表を書くと、効果の欄に「伝わっているはず」と書けるだけで、残りはほとんど「?」になりました。確かめたわけではないからです。何を確かめにいけばよいのかが、欄の形で見えた、ということでもあります。
ほかの業種なら
A社 業務用の洗浄機
| 対価(見合うか)で出そうな気がかり | 洗剤と点検の毎年の費用、止まる日数 |
|---|---|
| 入手(無理なく入るか) | 設置の段取り |
| 決める人の「いまのまま」 | 手で洗い続ける |
B社 建材
| 対価(見合うか)で出そうな気がかり | 職人が慣れるまでの手間、工期への影響 |
|---|---|
| 入手(無理なく入るか) | 販売店に在庫があるか、施工の説明を誰がするか |
| 決める人の「いまのまま」 | 使い慣れた従来の断熱材 |
C社 業務用のソフト
| 対価(見合うか)で出そうな気がかり | 二年めからの利用料、移行の作業 |
|---|---|
| 入手(無理なく入るか) | 誰が設定し、データを移すか |
| 決める人の「いまのまま」 | 表計算とファックス |
D社 計測の機器
| 対価(見合うか)で出そうな気がかり | 校正と保守の毎年の費用 |
|---|---|
| 入手(無理なく入るか) | 据え付けと、使い方の説明を誰がするか |
| 決める人の「いまのまま」 | 手作業の測定 |
A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。
理解を確かめる
問1「六つの問いは、関係から順に一つずつ突破させるもの」。正しいでしょうか。答えを見る
正しくありません。順番は決まっていない、点検のための枠です。どこで大きく止まっているかを探すのに使います。
問2工場長には効果が伝わっていて、対価・入手・信頼で止まっています。広告で「速さ」をもっと強く打ち出すと、どうなりそうでしょうか。答えを見る
すでに伝わっていることを、もう一度伝えることになり、止まっている場所は変わりません。毎年の費用、設置の段取り、故障時の対応の答えを用意するほうが先です。
やってみる
自分の会社の一件で
型01 六つの問いの点検
型1「六つの問いの点検」。止まった一件を一つ選び、六つの問いに、○(進んでいる)・×(止まっている)・?(分からない)を入れます。使う人・検討を進める人・決める人で、列を分けます。?が多くても失敗ではありません。そこが、次に確かめにいく先です。
- 六つの問い × 三つの立場
- ?の欄を、誰に確かめるか
- 自分の担当範囲で、先に見られるもの
本では
本では 『選ばれる理由のつくり方』
この話が、人のあいだでどう進んだか。
第1章。A社が六つの問いを手にするところから、第2章で、止まった一件を最初から書き出すところへ進みます。
本について →本の該当箇所:第1章 第3・4節、付録2(用語集)