1代理店の側から、一台を見る
「代理店が、ちゃんと売ってくれない」。けれども、代理店は別の会社です。一台が、代理店の側からどう見えているかを、三つで見ます。
- 採算 一台の手数料は、代理店の売上全体から見れば、数ある取り扱いの一つ。同じかばんには、同業のカタログも入っている
- 説明の負担 年に一、二度しか説明しない商品のことは、覚えていられない。聞かれて答えられないものは、勧めない
- 信用 一台売れることより、出入り先からこれからも相談してもらえることのほうが大事。だから、勧めるのは、あとで苦情が来ないもの
代理店の担当者が「定番のメーカー」を勧めるのは、自分の信用を守るための、筋の通った判断です。 定番とは、良い機械という意味ではなく、勧めて苦情が来なかった、という実績のことです。
いちばんの落とし穴は、「契約を結べば、売ってくれるはず」という思い込みです。担当者と代理店が動くのは、その商品を扱う意味があると思えたときです。儲かるか。売りやすいか(説明の手間が軽く、売ったあとに困らないか)。自分たちの商売の値打ちが上がるか(得意先からの信用が増すか、ほかに扱っている商品と組み合わせられるか)。三つのどれかが欠けていれば、カタログはかばんの底に沈みます。
2勧めない理由を、六つの問いで問い直す
「もっと売ってください」と頼んでも、動きません。動くのは、負うものが軽くなるか、得るものが増えたときです。勧めない理由は、仮説として確かめられます。
| 問い | 代理店の担当者から見ると | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 関係 | どの得意先に話せばよいか | 「最近、こういう困りごとの話が出た得意先はありますか」で名前が挙がるか |
| 効果 | 得意先に、何がよくなると言えるか | 訪問に同行し、帰りに「聞かれて困った質問」を聞く |
| 対価 | 手数料と続く取引は、通う手間に見合うか | 一台決まるまで何回通うかを聞く |
| 入手 | 下見・見積もり・導入を、無理なく進められるか | 段取りを、自分の言葉で説明できるか |
| 信頼 | 勧めて、得意先での信用を守れるか。すでに勧め慣れたメーカーはないか | 過去に困った一件を聞く。「相談が来たら、最初にどこの名前を出しますか」 |
| 継続 | 一度勧めて、次も勧めたいと思えたか | 勧めたあと、困ったことはなかったかを聞く |
六つを一度に解こうとせず、一社の、一人で、どれが当たっているのかを確かめます。
報奨金や販売キャンペーンは、この表で見ると「対価」が当たっているときの手です。話す相手が分からない、売ったあとが不安だ、という理由で止まっているなら、報奨を積んでも動けません。先に理由を確かめ、得の問題だと分かってから考えます。
3知らなかった四人より、知っていた一人に聞く
五人のうち一人だけが、導入の段取りを知っていた。そのとき、四人がなぜ知らなかったかより、一人がなぜ知っていたかを聞くほうが、次の手が見つかります。
答えが「前の年に、得意先で導入の次の朝に居合わせた。見たので、話せます」だったなら、次に考えるべきことは、説明会の回数ではなく、担当者に一度見てもらう機会をどうつくるかです。
見てもらう方法は、強い順に、次の朝に来てもらう、導入の一日を写真と時刻で記録して渡す、説明会とカタログ、です。説明会は、やめるのではなく中身を替えます。導入の一日の記録を見せ、見た担当者に五分話してもらう。費用は増えません。
4社長と担当者では、気にしていることが違う
| 気にしていること | 効く話 | |
|---|---|---|
| 代理店の社長 | 会社に入る手数料、取り扱いを続ける値打ち | 消耗品や点検のような、毎年の取引 |
| 代理店の担当者 | 得意先での自分の信用、自分の時間、自分の目標の数字 | 勧めたあとで困らないこと。説明の手間が軽いこと |
窓口の社長が「ぜひやりましょう」と言っても、工場を回っている担当者が困ったままなら、話は顧客に届きません。
やりがちな間違い
A社の場合
架空の会社の例
A社は毎年、代理店の担当者を集めて説明会を開き、休業日に設置できることにも触れてきました。それでも、五人のうち四人は覚えていませんでした。段取りを知っていた一人は、前の年、得意先の工場で設置の次の朝に居合わせていた人でした。A社は、次の朝の立ち会いと、設置の一日の記録を、代理店に「見てもらう」ための道具に変えていきます。
ほかの業種なら
A社 業務用の洗浄機
| 担当者が勧めない理由になりそうなもの | 設置の段取りを説明できない。故障時が不安 |
|---|---|
| 一度「見てもらう」機会 | 設置の次の朝 |
| 社長に効く話 | 消耗品と点検の毎年の取引 |
B社 建材
| 担当者が勧めない理由になりそうなもの | 施工のトラブルが自分に来る不安 |
|---|---|
| 一度「見てもらう」機会 | 最初の現場の施工 |
| 社長に効く話 | 継続して採用される現場 |
C社 業務用のソフト
| 担当者が勧めない理由になりそうなもの | 導入後の問い合わせが自分に来る不安 |
|---|---|
| 一度「見てもらう」機会 | 導入先が使い始めた日の画面 |
| 社長に効く話 | 毎月の利用料からの取り分 |
D社 計測の機器
| 担当者が勧めない理由になりそうなもの | 測定の不具合の相談に答えられない |
|---|---|
| 一度「見てもらう」機会 | 据え付けと、最初の測定 |
| 社長に効く話 | 校正と保守の毎年の取引 |
A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。
理解を確かめる
問1説明会を開いても勧めてもらえないとき、最初に確かめるとよいのは、どれでしょうか。A 説明会の回数 B 勧めない理由が六つの問いのどこにあるか答えを見る
B。話す相手が分からないのか、勧めたあとが不安なのか。理由によって手が変わります。
問2段取りを知っていた担当者が一人だけいました。何を聞きますか。答えを見る
なぜ知っていたのか。見たのか、聞いたのか。その答えが、ほかの担当者に何を用意すればよいかを教えてくれます。
やってみる
自分の会社の一件で
型08 代理店への頼みごと
型8「代理店への頼みごと」。勧めてもらえない理由の仮説を、六つの問いのどれかに当て、確かめるための質問を一つ決めます。次に、担当者に一度「見てもらう」機会を一つ書き、頼みごとと、相手の負担と見返りを同じ行に書きます。
- 相手
- 目的
- 頼みごと(三つまで)
- こちらが受け持つこと
- 返すもの
- 次の一件(名前と期日)
- 手数料の内か、外か
本では
本では 『選ばれる理由のつくり方』
この話が、人のあいだでどう進んだか。
第10章。段取りを知っていた一人の担当者は、こう答えました。
「休みの日に入れて、次の朝には動いていましたからね。見たので、話せます」
本について →本の該当箇所:第10章 第6・7節、第13章 第6節