マーケティングが止まったらSPARKLE 本について

壁 04 見えないテーマ:顧客を知る読む時間 約7分更新 2026年10月5日

顧客に聞くとき、なぜ「これからの意向」を聞かないのか

三行で言うと
  1. 「検討したいですか」への答えには、お金も手間もかからない。買うかどうかは、そこからは分からない。
  2. これからの意向より、これまでの行動を聞く。「この三年で、設備にお金を使いましたか。誰が決めましたか」。
  3. 言葉より、小さな行動で確かめる。聞く場では、売りこまない。

1丸はたくさんついた。商談にはならなかった

展示会のブースで、アンケートを配ったとします。「導入を、検討したいですか」。丸がついた用紙が四十枚集まり、営業が順に電話をかけました。商談に進んだのは、数えるほどでした。

丸をつけたのは、ブースに来た現場の責任者たちです。お金を出すかどうかを決めるのは、その会社の社長です。それに、丸をつけるのに、お金も手間もかかりません。数百万円を出す重さは、丸ひとつには含まれていません。

調べなかったわけではありません。ちゃんと聞いたのに、外れたのです。

2言ったことと、やることは違う

質問への答えと実際の行動が食い違うことは、古くから知られています。1930年代のアメリカでは、宿や食堂に手紙で「こういう客を受け入れますか」と尋ねた返事と、実際に訪ねたときの対応が、大きく食い違っていたという研究が発表されています。

食い違いには、わけがあります。

  • 聞かれた場では、誰でも感じのいい答えをしたくなる
  • 先のこと(そのときの懐具合や忙しさ)は、本人にも分からない
  • 「なぜ選んだのですか」と聞かれると、その場でもっともらしい理由を組み立ててしまう

悪気なく「買います」と答えて、悪気なく買わないのです。

3これまでの行動を聞く

まずい聞き方何がまずいか直した聞き方
導入を、検討したいですか先のことを聞いている。答えるのに、お金も手間もかからないこの一年で、見積もりを取ったことはありますか。誰が決めましたか
これがあれば、便利だと思いませんか「はい」としか答えようがない。便利かどうかと、買うかどうかは別今、どうしていますか。困る場面はありますか
価格と品質の、どちらを重視しますか二つから選ばせているが、決め手は別のところにあるかもしれない前回、機械を入れたとき、最後の決め手は何でしたか
当社のていねいなサポートに、ご満足いただけていますか「ていねいな」と先に言っている。「いいえ」と答えにくいサポートに連絡したことはありますか。そのとき、どうなりましたか
なぜ、買わなかったのですか責められているように聞こえる。理由をその場でつくらせる検討していたころのことを、順番に教えてもらえますか

こちらの商品の話をせず、相手のこれまでの出来事を、「はい」「いいえ」で終わらない形で聞きます。

話してもらった過去の行動は、これからの意向より、ずっと確かな手がかりです。設備に一度もお金を使ったことがない会社なら、どれだけ「検討したい」と言ってくれても、契約までの道は遠いと分かります。ただ、記憶違いはあります。「本人がそう話した」ことと、記録で確かめられたことは、分けて書きます。

上の表に、行動として聞ける項目を二つ足しておきます。どこで、何を見て調べたか(検索、展示会、販売パートナーの担当者、同業の知り合い)。予算を、誰が、いつ、どう通すのか。後者は、「顧客は、なぜ今決めないのか」の予算と時期の話につながります。

4言葉より、小さな行動で確かめる

話を聞く場では、持ち出しません。日をあらためて、たとえば毎年の費用まで入れた見積書の見本を送り、「社長にも見せてもらえますか」と頼みます。見てもらえたか、何を聞かれたか。お金や手間が少しでもかかる場面では、返ってくる答えの重みが変わります。

5聞く前に決めておくこと

  • 何を決めるために聞くのか。 そして「結果がこう出たら、こうする」まで、先に書く。結果を見てから都合よく読む余地が小さくなる
  • 聞く場では売りこまない。 否定的なことを言われて説明や反論を始めると、相手はあたりさわりのない話に戻る
  • 初めに伝える。 何のために聞くのか、聞いた話を誰が見るのか、あとで売りこみに使わないこと。そして、そのとおりに守る
記録を読み、見て、聞いて、数える。逆の順にはしない (本の図5-1)PNGSVG

やりがちな間違い

欲しい答えのほうへ連れていく。言葉づかい、選択肢の並べ方、質問の順番だけで、答えは変わります。
決めない人の答えで、決める人を判断する。丸をつけたのが現場の人なら、社長がどう判断するかは分かりません。
何人かの答えを、割合で語る。五人のうち四人が同じことを言っても、「八割がそう思っている」ではありません。言えるのは「こういう理由で止まる会社が、たしかにある」までです。

A社の場合

架空の会社の例

A社のマーケティング課長、早川さんは、翌年の展示会の用紙を一問に替えることにしました。「この一年で、洗い場のことで見積もりを取ったことはありますか。誰が決めましたか」。丸の数は減るはずです。そのかわり、営業が電話をかける先は、設備にお金を使ったことのある会社に絞られます。名刺の裏にも、「関心あり」ではなく、ブースで聞かれたことを書くことにしました。どちらも、早川さんの担当範囲で、誰の決裁も要りません。

ほかの業種なら

A社 業務用の洗浄機

これからの意向(避ける)洗浄機があれば、検討しますか
これまでの行動(聞く)この三年で、洗い場まわりに設備のお金を使いましたか。誰が決めましたか
小さな行動での確かめ毎年の費用まで入れた見積書の見本を、社長にも見せてもらう

B社 建材

これからの意向(避ける)この断熱パネルを、使ってみたいですか
これまでの行動(聞く)この一年で、使う断熱材を変えた現場はありましたか。誰が決めましたか
小さな行動での確かめ次の現場の図面で、手間と工期の拾い出しを頼まれるか

C社 業務用のソフト

これからの意向(避ける)受発注のソフトに、関心はありますか
これまでの行動(聞く)この三年で、受注のやり方を変えたことはありますか。そのとき、何で困りましたか
小さな行動での確かめ今の作業時間を入れた試算を、役員にも見せてもらう

D社 計測の機器

これからの意向(避ける)自動の測定に、関心はありますか
これまでの行動(聞く)前回、検査の機器を入れたとき、最後の決め手は何でしたか
小さな行動での確かめ手持ちの部品で、試しの測定を申しこまれるか

A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。

理解を確かめる

問1「価格と品質の、どちらを重視しますか」。この聞き方の、何がまずいでしょうか。答えを見る

二つから選ばせているので、本当の決め手が別のところにあっても出てきません。「前回、機械を入れたとき、最後の決め手は何でしたか」と、過去の出来事を聞きます。

問2展示会で「検討したい」に丸をつけた人が四十人いました。この数から、何が言えるでしょうか。答えを見る

関心を示した人が四十人いた、ということまでです。お金を出す人が誰か、実際に動くかは分かりません。設備にお金を使ったことがあるか、誰が決めたか、を聞き直します。

やってみる

自分の会社の一件で

型03 誰の言葉かを分けて書く記録

型3「誰の言葉かを分けて書く記録」。話を聞いたら、本人の言葉は言ったとおりに書き、こちらの推測とは別の欄に書きます。「これまでの行動」として聞けたことには、「本人が話した」か「記録で確かめた」かを添えます。

  • 1 記録で確かめたこと
  • 2 顧客本人から聞いた言葉
  • 3 間に入った人から聞いたこと
  • 4 こちらが考えたこと
  • 5 聞けていないこと
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本では

本では 『選ばれる理由のつくり方』

この話が、人のあいだでどう進んだか。

第5章。早川さんが聞き取りの計画を見せたとき、営業部長の黒田さんが最初に口にしたのは、反対でした。「止まった先は、ほとんど代理店のお客さんだよ」。そこから、どう聞きにいったか。

本について →

本の該当箇所:第5章 第1・2・4・5節

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