1声が戻らないのは、構造の問題
代理店や販売店を通じて売る会社では、見送った理由は、販売パートナーの担当者のところで止まりがちです。担当者には、それをメーカーに伝える決まりも、伝えて得になることもないからです(「代理店を通じて売る会社では、誰が『顧客』か」)。
だから、「声を集めよう」と号令をかけるだけでは、何も戻ってきません。誰の時間を、どれだけ使って、何を確かめるのかを決めて、小さく始めます。
2会えないときの四つの入口
| 入口 | 誰の時間を、どれだけ使うか | 分かること | 分からないこと |
|---|---|---|---|
| ① 手元の記録を読み直す | 自分の半日。誰にも頼まない | どの段階で止まったか。出した見積書に何が載っていなかったか | 理由。顧客の言葉 |
| ② 一件の経緯を、営業か販売パートナーの担当者と振り返る | 相手の三十分 | 経緯と、担当者の読み | それが顧客本人の言葉かどうか |
| ③ 共同訪問を相談する | 担当者の事前の十五分と、ふだんの訪問の日の三十分。顧客の三十分 | 顧客本人の言葉。現場の様子 | どのくらい広く当てはまるか |
| ④ 聞けなかったことを、次の案件で確かめる | 商談のついでに一、二問 | これから動く案件での事実 | 過去の止まった理由 |
上から順にやる手順ではありません。できるところから選びます。
3記録を読む、見る、聞く、数える。この順で
すでにある記録は、一番手軽なのに、一番飛ばされがちです。問い合わせの記録と文面。見積もりの控え。営業の失注メモ。点検と修理の記録。消耗品の出荷の記録。Webサイトでよく読まれているページと、検索されてきた言葉。
記録を読み、現場を見て、何人かに話を聞き、そこで立った仮説を、必要なら数えて確かめます。逆の順で、何を聞くべきかが分からないうちにアンケートをつくると、会社の側が思いついた選択肢しか並びません。
聞くときは、「なぜ取れなかったのですか」とは聞きません。「検討していたころのことを、順番に教えてもらえますか」と、時間の順に聞きます。営業や代理店の担当者に聞くときも、同じ形です。
4共同訪問は、頼み方が全部
終わった案件に、売らない目的で、マーケティングの人間が行く。頼みにくいのは、そこです。頼み方を一枚にまとめて、先に見せます。
- 目的と、しないこと 何を決めるために聞くのか。売りこみのやり直しはしない。担当の方の対応を評価する場でもない
- 質問は三つまで 先に見せる。聞かないこと(価格の交渉、他社の見積もりの額)も書く
- 当日の役割 紹介は販売パートナーの担当者、質問と記録はこちら
- 担当者に残るもの 直した資料を最初に使えるのはその人。案件が動き出したら、その人の案件のまま
- 結果をいつ返すか 一週間以内に、聞いた言葉をまとめて担当者に渡す
5断られたら、小さくする
- 同行は困る → 担当者が、次の訪問で一問だけ聞いてくる(答えは伝聞として記録する)
- 止まった先は気まずい → 導入してくれた会社から始める。技術者の点検に同行すれば、訪問は増えない
- 担当者の時間がない → 担当者本人への、十五分の電話だけにする
決める人に会えないなら、言い出した人に「社長に話したとき、何を聞かれましたか」と、過去の出来事として聞きます。
やりがちな間違い
A社の場合
架空の会社の例
マーケティング課長の早川さんは、まず①をやりました。この一年に出した見積書の控えは六十件。毎年の費用が載っていたものは、一件もありませんでした。その束を見せると、営業部長の黒田さんは、代理店の野口さんへの頼みごとを引き受けてくれました。結果は、全部は聞けませんでした。同行できたのは一社。ほかは振り返り、一問だけの伝聞、直販の先での聞き取りです。顧客の社長には、どこでも会えませんでした。
ほかの業種なら
A社 業務用の洗浄機
| まず読める手元の記録 | 見積書の控え、失注メモ、点検の記録 |
|---|---|
| 共同訪問を頼む相手 | 代理店の担当者 |
| 訪問を増やさずに聞ける場 | 技術者の点検 |
B社 建材
| まず読める手元の記録 | 見積もりの控え、採用されなかった現場の記録、施工の問い合わせ |
|---|---|
| 共同訪問を頼む相手 | 建材の販売店の担当者 |
| 訪問を増やさずに聞ける場 | 施工の説明に回る技術営業の現場 |
C社 業務用のソフト
| まず読める手元の記録 | 問い合わせの文面、業務の聞き取りのメモ、見積もりの控え |
|---|---|
| 共同訪問を頼む相手 | 販売代理店、導入を請け負う会社 |
| 訪問を増やさずに聞ける場 | 導入後の定例の打ち合わせ |
D社 計測の機器
| まず読める手元の記録 | 試しの測定の記録、見積もりの控え、校正の記録 |
|---|---|
| 共同訪問を頼む相手 | 商社の担当者 |
| 訪問を増やさずに聞ける場 | 据え付けや校正の訪問 |
A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。
理解を確かめる
問1顧客の声を集めたい。最初に、誰の時間を使うとよいでしょうか。答えを見る
自分の時間。手元の記録(見積書の控え、失注メモ、問い合わせの文面)を、半日かけて読み直します。誰にも頼まずにでき、どの段階で止まったか、何が載っていなかったかが分かります。
問2代理店の担当者に「同行は困る」と言われました。どうしますか。答えを見る
頼み方を小さくします。担当者が次の訪問で一問だけ聞いてくる、本人に十五分だけ電話で聞く、など。答えは伝聞として記録し、誰の声が入っていないかも書いておきます。
やってみる
自分の会社の一件で
型02 止まった一件の書き出し
型2「止まった一件の書き出し」。止まった案件を一つ選び、時間の順に、いつ・誰が・何を見せて・相手が何と言ったかを書き出します。書けない行の横には、「誰なら知っているか」を書きます。
- 時間の順
- 関わった人(この一件で、誰が何をしたか)
- 比べていた相手
本では
本では 『選ばれる理由のつくり方』
この話が、人のあいだでどう進んだか。
第5章。早川さんが見積書の控え六十件を営業部長に見せたとき、返ってきた言葉です。
「……野口さんに、俺から頼む」
本について →本の該当箇所:第5章 第3・6・7節、付録1