マーケティングが止まったらSPARKLE 本について

壁 04 見えないテーマ:顧客を知る読む時間 約7分更新 2026年10月5日

欲しい人と、決める人は、別にいる

三行で言うと
  1. 会社の買い物には、言い出す人、使う人、意見を言う人、決める人、手続きをする人が関わる。
  2. 決める人に話を持っていくのは、たいてい言い出す人。口で言える量しか届かない。だから、言い出す人が社内の説明にそのまま使える材料を用意する。
  3. 代理店を通じて売る会社では、顧客の会社の外にも、もう一人「決める人」がいる。

1一つの買い物に、何人も関わる

会社どうしの取引では、一つの買い物に何人もの人が、それぞれの立場で関わります。法人の購買の研究では、こうした人たちの集まりを購買センターと呼んできました。その買い物のあいだだけ生まれる集まりで、そういう部署があるわけではありません。

関わり方例(業務用の洗浄機の場合)気にしていること
言い出す人工場長設置で何日止まるか
使う人洗い場のパートの人たち操作は覚えられるか。かえって手間が増えないか
専門の立場から意見を言う人品質管理の担当者(いる場合)衛生の基準を満たすか
決める人社長今、投資すべきか。ほかに先にやることはないか
手続きをする人経理の担当者(いる場合)支払いの条件。毎年の費用

肩書きと役割は、必ずしも重なりません。 小さな会社では、社長が現場に出ていることも、工場長が実質的に決めていることもあります。一人が二つの役割を持つこともあります。この表は、肩書きではなく、「この一件で、誰が何をしたか」で書きます。空欄があってかまいません。

2決める人に届くのは、口で言える量だけ

カタログに大きく書いてある「洗う速さ」は、言い出す人には響きます。けれども、決める人が知りたいのは、速さよりも「今、買うべき理由」です。

しかも、決める人に話を持っていくのは、メーカーではなく言い出す人です。小さな会社では、それは会議ではなく、昼休みや帰りぎわの立ち話であることが多いものです。口で言える量しか、届きません。

工場長が、社長に見せられたもの (本の図2-3)PNGSVG

カタログは、読む人のためにつくられています。決める人向けの材料は、読む人ではなく、渡す人のためにつくります。 たとえば、今のやり方で毎年かかっている費用と並べた一枚です。

決める人に渡る一枚は、言い出す人が気に入っている点(たとえば洗う速さ)ではなく、会社として共通の関心で書きます。今のやり方と並べた費用、止まる日数です。一人ひとりの関心に合わせすぎた材料は、社内で話が割れるもとになります。

3同じ買い物でも、人によって重さが違う

その買い物が、その人にとってどれくらい大ごとか(関与)は、人と立場と状況で変わります。工場長にとって洗浄機は大ごとで、時間をかけて調べ、慎重に比べます。社長にとっては今期に決めることの一つで、材料が足りなければ「今のままで十分」と決めてしまいます。

人は、いつも一番を探しているわけではありません。「これで十分」と思えたところで決めます(満足化)。決める人に効くのは、短くて、今のやり方と並べて読める材料です。

4顧客の会社の外にいる、もう一人

代理店を通じて売る会社では、表に入らない人がもう一人います。販売パートナーの担当者です。

どのメーカーの話を、どの会社の誰につなぐかは、その担当者が決めています。担当者が自社のことをよく知らなければ、話は言い出す人のところまで届きません。知っていても、売り慣れた他社の商品のほうが、あとで苦情を受ける心配が少なければ、そちらを持っていきます。担当者が勧める理由は、顧客が選ぶ理由とは別にあります。

やりがちな間違い

言い出す人向けの資料しかない。決める人の「今、買う理由は」に答える材料がなければ、話は立ち話で終わります。
言い出す人を飛び越えて、決める人に会いにいく。道としてはありますが、言い出す人や担当者の顔をつぶす代償があります。どちらの道にも代償があると分かったうえで選びます。
表の空欄を、想像で埋める。埋められない欄は、「誰なら知っているか」を欄の横に書いておきます。

A社の場合

架空の会社の例

A社のマーケティング課長、早川さんが、止まった一件でこの表を埋めてみると、工場長の行に書けたのは、営業が聞かれた「設置で何日止まるか」だけでした。社長の行は空欄です。欄の横に、「野口さん(代理店の担当者)なら知っている」と書きました。代理店経由の案件では、この表を埋められるのは担当者だけ、ということがよくあります。

ほかの業種なら

A社 業務用の洗浄機

言い出す人工場長
決める人顧客の社長
会社の外の「決める人」代理店の担当者
渡す人のための一枚(例)今のやり方の毎年の費用と並べた総額

B社 建材

言い出す人現場監督
決める人工務店の社長(施主の意向も効く)
会社の外の「決める人」建材の販売店の担当者
渡す人のための一枚(例)職人の手間と工期を、今の材料と並べた一枚

C社 業務用のソフト

言い出す人受注係の責任者
決める人社長、または費用を認める役員
会社の外の「決める人」販売代理店、導入を請け負う会社
渡す人のための一枚(例)今の作業時間と並べた、月々の費用

D社 計測の機器

言い出す人検査の担当者の責任者
決める人工場長、設備の予算を持つ部長
会社の外の「決める人」商社の担当者
渡す人のための一枚(例)校正と保守まで入れた、毎年の費用

A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。

理解を確かめる

問1「この表は、肩書きで書く」。正しいでしょうか。答えを見る

正しくありません。「この一件で、誰が何をしたか」で書きます。肩書きと役割は重ならないことがあり、一人が二つの役割を持つこともあります。

問2決める人向けの一枚をつくるとき、何を基準に考えるとよいでしょうか。答えを見る

それを渡す人(言い出す人)が、立ち話で口にできるか。読む人のためのカタログとは別に、渡す人のためにつくります。

やってみる

自分の会社の一件で

型02 止まった一件の書き出し

型2「止まった一件の書き出し」。止まった案件を一つ選び、上の五つの関わり方に、名前か役割を書きます。そのうえで、誰が、誰に、何を見せたのかを時間の順に書き出します。埋められない欄の横には、誰なら知っているかを書きます。

  • 時間の順
  • 関わった人(この一件で、誰が何をしたか)
  • 比べていた相手
この型で整理する →A社の記入例を見る登録は要りません。入力した内容は、送信しません。

本では

本では 『選ばれる理由のつくり方』

この話が、人のあいだでどう進んだか。

第2章。決める人に届く道は二つありました。言い出す人に材料を持たせる道と、代理店の担当者に頼んで社長に会う道です。営業部長は後者を試し、「今はちょっと」と言われます。早川さんは、前者から始めます。社長向けの一枚が形になるのは第11章です。

本について →

本の該当箇所:第2章 第3・4節

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