1検討は、一本道では進まない
買い物は、気づく → 調べる → 比べる → 決めて買う → 使って確かめる、の五つの段階に分けて考えられてきました。けれども、全員がこの順に進むわけではありません。
- じっくり進む 段階ごとに時間をかける
- 飛ばす 消耗品の補充のように、調べも比べもせず、いつもの相手に頼む
- 戻る 見積もりを見てから、「そもそも本当に要るのか」に引き返す
- 途中で離れる 調べてはみたが、忙しくなってそれきりになる
見落とされやすいのは、途中で離れる人たちです。五つの段階は「顧客はこう動く」という決まりではなく、「どの段階で止まったのか」を考えるための物差しです。
2「急がなくていい」の三つの読み方
| 読み方 | 確かめる相手 | 打つ手 |
|---|---|---|
| 本当に、急がなくてよい。困りごとが、まだ切実になっていない | 言い出した人 | 追わない。今のやり方で足りている会社は、段取りを整えても、費用を見せても動かない |
| 急ぐ理由はあるのに、決める人に届いていない | 言い出した人、販売パートナーの担当者 | 言い出した人に、決める人へ渡せる材料を持たせる |
| 急ぎたいが、切りかえの不安が大きい | 決める人 | 決めることの危険を小さくする。休業日の導入、やめられる形 |
どれなのかは、確かめるまで分かりません。一つめなら、追わない判断もあります。
三つめ(急ぎたいが、不安が大きい)は、見落とされやすい読み方です。変えたい気持ちはあるので、関心が高そうに見えます。それでも決まらないのは、決めることが怖いからです。
3切実になる、きっかけ
困りごとがあるだけでは、まだ「急ぐ話」になりません。きっかけがあって、初めて動きます。
- 人が辞めた。募集しても集まらない
- 取引先から、やり方の見直しを求められた
- 今の機械が古くなった
きっかけが分かると、追う時期が分かります。きっかけのない会社を、いま追いかける必要はありません。きっかけは、変わりたい気持ちを強めるものです。止めているほうの手間と不安は、別に小さくします(「競合に『いまのまま』を数えるのは、なぜか」)。
4予算と時期
設備の買い物は、思い立った月に決まるとは限りません。
- 来期の設備の話を、いつするのか
- 繁忙期の前に入れたいのか、後なのか
- 自己資金で出すのか、借入やリースにするのか
資金の出どころが決まっていなければ、決める人は「急がなくていい」と言います。顧客の決算の月と、設備を決める時期は、毎月通っている販売パートナーの担当者が知っていることがあります。聞く項目に足します。
5検討に、区切りを置く
区切りのない検討は、「いまのまま」に落ち着きがちです。見積もりを出したら、「社長にお話しになったあと、出た疑問だけ伺います」と、次の日を決めます。日付は、顧客が入れたい日から逆に数えて置きます。
やりがちな間違い
A社の場合
架空の会社の例
A社は、顧客がいつ設備を決めるのかを、まだ知りませんでした。マーケティング課長の早川さんは、代理店の担当者との打ち合わせで、決算の月と、設備をいつ決めるかも聞いてみました。決算の月は分かりました。社長がいつ決めるかは、担当者にも分かりませんでした。分からないことも、分からないと書いておきます。
ほかの業種なら
A社 業務用の洗浄機
| 切実になるきっかけ | パートが辞めた。取引先から衛生管理の見直しを求められた |
|---|---|
| 予算と時期 | 決算の月、繁忙期の前後 |
| 決める人の不安 | 設置で製造が止まる |
B社 建材
| 切実になるきっかけ | 職人が足りない。施主から性能の説明を求められた |
|---|---|
| 予算と時期 | 着工の予定、年度の仕様の見直し |
| 決める人の不安 | 慣れない施工で工期が延びる |
C社 業務用のソフト
| 切実になるきっかけ | 受注の担当者が辞めた。取引先から発注の方法を変えるよう求められた |
|---|---|
| 予算と時期 | 決算の月、繁忙期を避けた切りかえの時期 |
| 決める人の不安 | 切りかえのあいだ、受注が止まる |
D社 計測の機器
| 切実になるきっかけ | 取引先から検査の記録を求められた。測定の人手が足りない |
|---|---|
| 予算と時期 | 設備の予算を組む時期 |
| 決める人の不安 | 検査の手順が変わり、記録が途切れる |
A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。
理解を確かめる
問1決める人が「急がなくていい」と言いました。この言葉から、すぐに分かることはどれでしょうか。A 困りごとが切実ではない B 材料が届いていない C 切りかえが不安 D この言葉だけでは分からない答えを見る
D。三つの読み方のどれなのかは、言い出した人や販売パートナーの担当者に確かめるまで分かりません。
問2見積もりを出したあと、区切りの日を置くのはなぜでしょうか。答えを見る
区切りのない検討は、「いまのまま」に落ち着きがちだからです。顧客が入れたい日から逆に数えて、次に話す日を決めます。
やってみる
自分の会社の一件で
型02 止まった一件の書き出し
型2「止まった一件の書き出し」。返事が止まった案件を一つ選び、時間の順に書き出したうえで、三つの読み方のどれに近いかを、根拠と一緒に書きます。決算の月と、設備を決める時期が書けなければ、誰に聞くかを書き添えます。
- 時間の順
- 関わった人(この一件で、誰が何をしたか)
- 比べていた相手
本では
本では 『選ばれる理由のつくり方』
この話が、人のあいだでどう進んだか。
第2章。読者だけが聞いた顧客の社長の「急がなくていい」を、A社はまだ知りません。決算の月と決める時期を聞きにいくのは、第5章です。
本について →本の該当箇所:第2章 第2・6節、第12章 第4節