1一番足りないものから数える
施策を比べる前に、制約を見ます。全体の出来高は、一番狭いところで決まります。そこ以外をいくら速くしても、全体は速くなりません。
足りないものの候補は、お金だけではありません。
- 新しく使える予算
- 営業の時間
- 技術者の日数
- 販売パートナーの担当者の時間
業務用の洗浄機のメーカーで数えてみます(数字は仮定)。予算は350万円で、二つの案は合わせて350万円。お金だけなら両方できます。ところが、両方をやって両方が当たると、下見と設置で技術者の日数が56日要り、空きの40日を16日超えます。注文が来ても、入れられません。
先に尽きるのは、お金ではなく、人の時間でした。 ここを見ずに広告だけを増やすと、返事が遅れ、下見は急ぎ足になり、約束を守れなかった話が販売パートナーを通じて広まります。施策の量は、やりたいことからではなく、一番狭いところが受けきれる量から決めます。
2「何もしない」を一列に入れる
何かを選ぶと、その人と時間とお金で、できたはずの別のことができなくなります。選ばなかったものの価値が、選んだものの見えない費用です(機会費用)。「良いことかどうか」で考えると、一覧のすべてが良いことです。「これをやるかわりに、何をあきらめるのか」で考えて、はじめて順番の話になります。
そこで、比べる表に「何もしない」の列を必ず入れます。今のままでも、売れている分があるからです。
| 観点 | 何もしない | 増やす案 | 減らす案 |
|---|---|---|---|
| 目標への効き目の見込み | 今のまま | うまくいけば+4台。中身が薄まれば+1〜2台 | 仮説どおりなら+4台。半分当たりなら+2台 |
| 見込みの確からしさ | 高い | 低い(確かめた根拠が少ない) | 中くらい(数社の声) |
| 新しくかかるお金 | なし | 年に300万円ほど | 50万円ほど |
| 使う人と時間 | なし | 営業の対応が増える | 技術者の日数を施策と設置に |
| 誰が決められるか | — | 社長。展示会は申し込むと戻れない | 一部は担当者が進められる |
| 結果が分かるまで | — | 媒体で違う(数週間〜半年以上) | 三か月から半年 |
| 外れたとき、残るもの | なし | どこから引き合いが来るかの知識 | 資料、設置の流れ、見送りの理由の理解 |
| 引き返せるか | いつでも始められる | 広告はやめられる。展示会は戻れない | いつでも直せる |
| ほかの施策への影響 | なし | 引き合いが増えても、止まる割合は変わらない | 止まる割合が下がれば、増やす案の効き目も上がる |
(数値はすべて仮定)
3点数をつけない。見込みは幅で
この表には、点数をつけません。 点も、観点ごとの重みも、つけた人の感覚です。「3.8点と3.4点」と出すと、小数点のぶんだけ確かな判断に見えてしまいます。見込みを幅で書くのも同じ理由です。一つの数字で書くと、それが約束のように扱われます。
4土台になるほうを先に
一番の手がかりは、表の最後の行、ほかの施策への影響です。止まる割合を下げる施策のあとで入口を広げると、同じ広告の効き目が大きくなります。逆の順だと、呼びこんだ人が同じ場所で止まります。
施策には、ほかの施策の土台になるものがあります。 土台になるほうを先にやり、上に載せるほうは、土台の効き目と、受けきれる量を確かめてから広げます。
やりがちな間違い
A社の場合
架空の会社の例
A社では、新しい予算350万円で二つの案は両方できる計算でした。けれども、技術者が新しいことに使える日数は、二人で年に40日ほど。両方が当たると、注文が来ても入れきれないと分かりました。A社は、前半の半年は見送りを減らす案に集中し、新しい広告の300万円は使わずに取っておくと決めました。半年後に、契約に進む割合、技術者の日数の空き、値引きで決めた契約が増えていないか、の三つを見て、広告を始めるかを決め直します。「両方を少しずつ」は退けました。分けると、半年後にどちらも結果が読めなくなるからです。
ほかの業種なら
A社 業務用の洗浄機
| 先に尽きそうなもの | 設置と点検の技術者の日数 |
|---|---|
| 「何もしない」の列に書くこと | 今の台数 |
| 土台になりそうな施策 | 総額の表つきの見積書、設置の流れ |
B社 建材
| 先に尽きそうなもの | 施工の説明に回る技術営業の時間、販売店の担当者の時間 |
|---|---|
| 「何もしない」の列に書くこと | 今の採用件数 |
| 土台になりそうな施策 | 施工の手順と工期の資料 |
C社 業務用のソフト
| 先に尽きそうなもの | 導入を支える担当者の時間 |
|---|---|
| 「何もしない」の列に書くこと | 今の契約数と解約数 |
| 土台になりそうな施策 | 移行の手順と、二年めの料金の見せ方 |
D社 計測の機器
| 先に尽きそうなもの | 据え付けと校正の技術者の日数 |
|---|---|
| 「何もしない」の列に書くこと | 今の販売台数 |
| 土台になりそうな施策 | 校正まで入れた費用の見せ方 |
A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。
理解を確かめる
問1二つの案が、どちらも予算に収まっています。両方やってよいかを決める前に、何を数えるとよいでしょうか。答えを見る
一番足りないもの。お金以外に、営業の時間、技術者の日数、販売パートナーの担当者の時間のどれが先に尽きるかを数えます。
問2比べる表に点数をつけないのは、なぜでしょうか。答えを見る
点も重みも、つけた人の感覚だからです。小数点のぶんだけ確かな判断に見えてしまい、確かめた評価と推測の違いも消えます。
やってみる
自分の会社の一件で
型12 一つの計画
型12「一つの計画」。候補の施策を二つ選び、「何もしない」と並べて三列にします。効き目の見込みは幅で、引き返せるか、ほかの施策への影響まで書きます。表の上に、自分の会社で一番先に尽きるものを一行書きます。
- 戦略
- 目標
- 課題と仮説
- 施策と「なぜなら」
- お金と人
- 見るもの
- 見直す日と条件
- やらないこと(いつまで)
- 決める前に見せた記録
本では
本では 『選ばれる理由のつくり方』
この話が、人のあいだでどう進んだか。
第15章。二つの案を同じ表に並べたあと、A社は誰が決められるかで施策を分け、「先にやる一つ」と「やらないこと」を決めます。やらないことに、いつまでかを入れるのも、この章です。
本について →本の該当箇所:第15章 第4・5節