1三か月で、売上は判定できない
引き合いから契約まで、二か月から四か月かかる商売なら、三か月の試しで契約を数えても、決まるのは前の期の引き合いかもしれません。件数が少なければ、割合も揺れます(「件数が少ないとき、割合で言ってよいか」)。
それなのに、三か月後の会議で聞かれるのは、たいてい「で、何台売れたんだ」です。売上の段を、三か月で判定する約束になっているのが、すれ違いのもとです。
2見るものを、三段に分ける
| 段 | 見ること | いつ分かるか |
|---|---|---|
| 実行できたか | 決めたとおりに、資料が渡され、見積書が出され、メモが届いたか | 三か月で分かる。一件ずつ数えられる |
| 障壁はどう変わったか | 顧客はどこで止まったか。何と言ったか。前と同じ理由か、新しい理由か | 三か月で見え始める。数件でも学べる |
| 売上は動いたか | 引き合い、下見、見積もり、契約の件数 | 半年後、一年後に前の年と並べる |
一段めを先に置くのは、使われなかった施策の効き目は、測れないからです。契約を数える前に、資料がかばんから出たのかを数えます。二段めは、件数が少ない会社の強みです。三か月で数件なら、止まった理由を全部の案件について聞けます。
一段め・二段めは先に動く数字(先行指標)、三段めはあとから動く数字(遅行指標)です。先に動く数字は、あとから動く数字につながるはずだ、という仮説つきで見ます。
3試す前に、報告の約束をする
三段に分けたら、決める人に、試す前に伝えます。
「三か月後にご報告するのは、広げてよいかどうかです。売上は、半年後と一年後に、前の年と並べてお見せします」
先に言っておかないと、三か月後の会議で聞かれるのは、「で、何台売れたんだ」です。
報告の紙は、上下に分けます。上は誰が書いても同じになる三つ(事実/計画どおりにできなかったこと/先に決めた条件との照らし合わせ)。下は人で変わる三つ(分かったこと/まだ仮説のこと/次に誰が何を確かめるか)。
4見直す日と、見直すきっかけ
計画も、修正しながら使うものです。修正する日と修正するきっかけを、先に決めておきます。
| いつ | 見るもの | こうなっていたら |
|---|---|---|
| 毎月(三十分) | 引き合い・見積もり・契約の件数。見送りの理由。人の日数 | 日数が見積もりを大きく超えたら、進め方を直す。引き合いが二か月続けて前の年を下回ったら、集まる |
| 半年後 | 契約に進んだ割合、見送りの理由の内訳、顧客の顔ぶれ | 先に決めた条件のとおり |
| 年度の終わり | 販売台数、使い続けている割合、実例の数 | 戦略そのものを見直すかを話し合う |
| そのつど | 同業が同じ約束を言い始めた。販売パートナーの担当者が替わった | 決めた日を待たずに集まる |
見直すときは、直す深さを見きわめます。日数が増えているなら、進め方を直す。見送りの理由が仮説と違っていたなら、仮説を直して施策を選び直す。約束そのものが響いていないなら、戦略まで戻る。「うまくいっていない」という声が出たら、まず「それは、どの欄の話だろう」とたずねます。
やりがちな間違い
A社の場合
架空の会社の例
A社のマーケティング課長、早川さんは、試しの計画を書き直したあと、始める前に社長に伝えました。三か月後に報告するのは広げてよいかどうか、売上は半年後と一年後に前の年と並べる、と。三か月後の会議で営業部長は「契約1件は、去年と同じ数だ」と言いましたが、話は「広げるか、直すか」の判断に進みました。
ほかの業種なら
A社 業務用の洗浄機
| 三か月で見る「実行できたか」 | 資料が渡されたか、見積書に総額の表がついたか |
|---|---|
| 三か月で見る「障壁の変化」 | 見積もりのあとで止まる理由 |
| 売上を見る時期 | 半年後、一年後 |
B社 建材
| 三か月で見る「実行できたか」 | 手順書が現場に渡ったか |
|---|---|
| 三か月で見る「障壁の変化」 | 採用されない理由 |
| 売上を見る時期 | 着工の時期をまたいで半年後 |
C社 業務用のソフト
| 三か月で見る「実行できたか」 | 試算が商談で出されたか |
|---|---|
| 三か月で見る「障壁の変化」 | 契約の手前で止まる理由 |
| 売上を見る時期 | 契約更新をまたいで一年後 |
D社 計測の機器
| 三か月で見る「実行できたか」 | 校正まで入れた見積書が出たか |
|---|---|
| 三か月で見る「障壁の変化」 | 試しの測定のあとで止まる理由 |
| 売上を見る時期 | 設備の予算の時期をまたいで一年後 |
A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。
理解を確かめる
問1三か月の試しの報告で、決める人に伝えておくとよいことは何でしょうか。答えを見る
三か月後に報告するのは「広げてよいか」で、売上は半年後と一年後に前の年と並べる、ということ。試す前に伝えます。
問2見るものの三段のうち、なぜ「実行できたか」を先に見るのでしょうか。答えを見る
使われなかった施策の効き目は、測れないからです。
やってみる
自分の会社の一件で
型11 結果の報告
型11「結果の報告」を、試す前に下書きします。三段(実行できたか/障壁はどう変わったか/売上は動いたか)それぞれに、何をいつ見るかを書き、決める人に見せて「三か月後に報告するのはこれです」と伝えます。あわせて、見直す日と、日を待たずに集まるきっかけを一行ずつ書きます。
- 一件ずつ(一件を一行)
- 上1 事実(分母つき)
- 上2 計画どおりにできなかったこと
- 上3 先に決めた条件との照らし合わせ
- 別の説明
- 下1 分かったこと
- 下2 まだ仮説のこと
- 下3 次に誰が何を確かめるか
本では
本では 『選ばれる理由のつくり方』
この話が、人のあいだでどう進んだか。
第16章。試しの計画を書き直したあと、早川さんは社長にこう伝えました。
「三か月後にご報告するのは、広げてよいかどうかです。売上は、半年後と一年後に、前の年と並べてお見せします」
本について →本の該当箇所:第16章 第4節、第18章 第7節、付録1