1同じ名簿、同じカタログで、上から順に
見込みのある顧客の名簿が、従業員の多い順に並んでいる。営業はそれを上から回り、カタログはどの会社にも同じもの。よくある形です。
ところが、止まった会社の事情を聞いていくと、会社の大きさとはあまり関係がないことがあります。人手が足りなくて止まった会社、取引先から求められて動いた会社、すでに同業の機械を使っていて買い替えを考える会社。同じ業種でも、課題も、比べている相手も、気にする人も違うのに、全員に同じ話をしていたことになります。
「うちには大きすぎる」と言われて終わる問い合わせが多いなら、商品が合う相手と、呼びこんでいる相手がずれている、と考えます。
2三つの分け方
似た顧客をまとめたものをセグメントと呼びます。課題や買い方が似ている顧客のまとまりです。
- 誰かで分ける。業種、規模、地域。名簿や統計に載っているので、分けやすい
- どんな課題か、どんな場面かで分ける。人手が足りないのか、基準を上げたいのか、処理を速くしたいのか
- どう買い、どう使っているかで分ける。初めてか買い替えか。誰が決めるのか
外から見える特徴ほど調べやすく、内側の事情ほど、選ばれ方に効いてくることがあります。
3課題で分け、見える特徴で探す
「人手が足りなくて、ラインを止められない会社」は、名簿には載っていません。「毎日出荷のある、惣菜と弁当の会社」なら、名簿から拾えます。課題でセグメントをつくり、目に見える特徴で探しにいきます。
見分ける手がかりも、仮説として置きます。求人を出し続けているか(人手の手がかり)。納め先に大手の小売があるか(基準の手がかり)。どちらも机の上で調べられます。問い合わせの文面に「人手」や「パート」が出てくるかも、手がかりになります。
4分けきらない
| 人手が足りない工場 | 衛生管理を急ぐ工場 | 買い替えを考える工場 | |
|---|---|---|---|
| 名簿で拾える特徴 | 毎日出荷のある、惣菜や弁当の中小工場 | 小売への納品が多い工場 | 同業の機械をすでに使っている大きな工場 |
| 課題 | 洗い場の人手が足りない。止められない | 納め先から見直しを求められている | 処理が追いつかない。機械が古い |
| 比べている相手(仮説) | 人を増やす、「いまのまま」 | 「いまのまま」、手順の見直し | 同業の機械 |
| 伝える中心(仮説) | 製造を止めずに入れられる | 洗い上がりがそろう。記録が残せる | 処理の速さ、買い替えの費用 |
(業務用の洗浄機の例。内容は仮定)
セグメントは、名簿を分けきったものではなく、力を入れる候補の仮説です。 事情がまだ分からない会社は、どこにも入れずにおきます。二つに重なる会社は、より切実な課題のほうに入れて、二度は数えません。
分けてみると、競合もセグメントごとに違うことに気づきます。同業との性能くらべは、買い替えを考える会社には当てはまりますが、ほかの二つにはほとんど関係がないかもしれません。
ここで一つ、分けておきたいことがあります。BtoB の買い物は何年かに一度で、いま買う時期にいない会社も、きっかけが来れば買う側に回ります。セグメントで絞るのは、営業の訪問、資料、見積もりの見せ方といった、力の入れ先です。名前を知っておいてもらう範囲まで、同じように狭める必要はありません。先に追う相手と、名前を知っておいてもらう範囲は、分けて決めます。
5確かめ方
- 断った会社(「大きすぎる」と言った会社)の規模と困りごとを、追う相手と見比べる
- 問い合わせを、入ってきた入口(代理店の紹介、展示会、Web、営業の訪問)で分けて数える
- 「セグメントが違えば、こちらのやることが変わるか」。どれにも同じことをするなら、分けただけで終わっている
やりがちな間違い
A社の場合
架空の会社の例
A社では、社内で出ていた三つの仮説(止まる日数、衛生管理、価格)は、どれも外れではありませんでした。ただ、当てはまる会社が別々だったのです。マーケティング課長の早川さんは、名簿の惣菜・弁当の三百社について、この一年に求人を出した跡があるかを当たり、名簿に一列足しました。部下と二人で、二日かかりました。
ほかの業種なら
A社 業務用の洗浄機
| 課題で分けたセグメントの例 | 人手が足りなくて、止められない工場 |
|---|---|
| 名簿で拾える特徴(手がかり) | 毎日出荷、求人を出し続けている |
| 「大きすぎる」と言われそうな相手 | 週に数回の出荷の小さな工場 |
B社 建材
| 課題で分けたセグメントの例 | 職人が足りず、施工の手間を減らしたい工務店 |
|---|---|
| 名簿で拾える特徴(手がかり) | 施工の件数、求人を出し続けている |
| 「大きすぎる」と言われそうな相手 | 年に数棟の工務店 |
C社 業務用のソフト
| 課題で分けたセグメントの例 | 手作業の受注が多く、担当者に頼りきりの卸売の会社 |
|---|---|
| 名簿で拾える特徴(手がかり) | 取引先の数、注文書のファックス番号を載せている |
| 「大きすぎる」と言われそうな相手 | 取引先が少なく、注文が月に数件の会社 |
D社 計測の機器
| 課題で分けたセグメントの例 | 取引先から検査の記録を求められている部品メーカー |
|---|---|
| 名簿で拾える特徴(手がかり) | 納め先に大きな完成品メーカーがある |
| 「大きすぎる」と言われそうな相手 | 検査の数が少ない工場 |
A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。
理解を確かめる
問1良いセグメントの分け方かどうかは、何で確かめますか。答えを見る
「セグメントが違えば、こちらのやることが変わるか」。伝える中心、見せ方、受け手が変わらないなら、分けただけで終わっています。
問2「人手が足りない会社」は名簿に載っていません。どう探しますか。答えを見る
課題でセグメントをつくり、名簿で拾える特徴(毎日出荷、求人を出し続けている、など)で探しにいきます。手がかりも仮説なので、販売パートナーの担当者と当たり外れを確かめます。
やってみる
自分の会社の一件で
型05 選んだ理由と、見直す条件
型5「選んだ理由と、見直す条件」。課題で分けたセグメントを二つか三つ書き、先に追う相手を一つ選びます。選んだ理由と、いつ・何を見て選び直すかを、同じところに書きます。
- 選んだ理由(三つまで)
- 大きさ(幅で)
- 根拠と確かさ
- 順番
- 見直す日と条件
本では
本では 『選ばれる理由のつくり方』
この話が、人のあいだでどう進んだか。
第6章。名簿を課題で分け直したあと、どのセグメントから始めるかを、販売パートナーが会えている相手と重ねて決めていきます。営業の目標と食い違ったときに何を合わせるかも、この章です。
本について →本の該当箇所:第6章 第1・2・3節、付録1