1弱くなったように見えて、答えになっている
社内の約束は「下見で条件を確かめた工場には、製造を止めずに入れる」。縮めるうちに、頭の条件が落ちて、「製造は止めません」だけが残ります。顧客には、こう言います。
「契約の前に下見をして、製造を止めずに入れられるかどうかを、先にお答えします。難しい場合は、そのときにお伝えします」
弱くなったように見えます。けれども、顧客が知りたいのは「うちの場合はどうなのか」です。正確に言うことは、それに答えることでもあります。
2主張・事実・つなぐ理由
信じてもらえる形には、三つの部品があります。
- 言いたいこと:多くの搬入口を、そのまま通ります
- それを支える事実:本体の幅は1,200ミリです
- 事実と言いたいことをつなぐ理由:搬入口は、たいていそれより広いから
あいだの理由が入って、聞いた人が確かめられる話になります。
3あいまいな言葉を、確かめられる言葉に
| あいまいな言葉 | 確かめられる言葉(例) |
|---|---|
| コンパクト | 幅1,200ミリ |
| かんたん操作 | 毎日の操作は三つ |
| 充実のサポート | 故障の電話は、その日のうちに技術者につなぎます |
確かめられる言葉だけでは読んでもらえない、と心配になるかもしれません。相手が知りたい順に並べ、場面が浮かぶ言葉にすれば、正確さと読みやすさは両立します。あとで「話が違う」と言われることも減ります。
測っていない数字は、書きません。 「人手が半分に」と書きたくなっても、まだ測っていないなら書きません。事実と違う表示や、裏づけのない性能の表示には、事業者向けの商品でも法律の決まりがあります。どの決まりが当てはまるかは、専門家に確かめます。
比べ方にも決まりがあります。条件をそろえる(片方は五年、片方は一年、で比べない)。仮定を見せる。都合の悪い欄も残す。同業の商品と名前を挙げて比べる場合は、法律や業界の決まりが関わります。
4できないことも、同じ紙に
長所だけを伝えるより、短所もあわせて伝えるほうが信用されやすい、とされています(量や置き場所で効き方は変わります)。仕様として応えないこと(一度に大量に洗うこと、記録を自動で残す機能など)を、資料に書きます。合わない顧客は契約の前に自分で気づけ、会社も合わない相手の下見に人を使わずに済みます。
5便益の欄が埋まらないとき
ある相手の一番の気がかりに答える機能が、ない。こういうとき、言葉で何とかしたくなります。「衛生管理を、しっかり支える洗浄機」。読んだ人が、記録の機能もあるのだろうと受け取ってくれそうな、ぼんやりした言い方です。伝え方の工夫に見えて、じつは約束の水増しです。 買ったあとで顧客は気づき、その不満を最初に受けるのは、販売パートナーの担当者です。
便益の欄が埋まらないのは、提案そのものが、その相手に対して弱い、という知らせです。言葉では埋めません。
| 空欄の理由 | 行き先 |
|---|---|
| まだ調べていない(実例、数字) | 次の数社で記録する |
| まだ決まっていない(故障時の対応の書面など) | 営業・技術者・販売パートナーと合わせる |
| できない | 「約束しないこと」に入れて資料に書く。商品に手を入れるかは、要望の件数を添えて開発と経営へ |
6約束しないことは、決める人が違う
「約束しないこと」には、重さの違うものが混ざっています。大きく書かないこと(担当者が決められる)、仕様として応えないこと(開発と経営)、人と時間を回さないこと(営業の責任者と経営)。重さが違えば、決める人も違います。大きく書かないことは、捨てることではありません。
やりがちな間違い
A社の場合
架空の会社の例
A社の営業部長は、衛生管理を急ぐ工場にも同じ形の資料をつくれないか、と言いました。その工場の一番の気がかりは、洗浄の記録を取引先に示せることでしたが、A社にその機能はありません。マーケティング課長の早川さんは言葉で埋めず、「記録の機能はありません」と正直に書いて、それでも合う顧客を待つ形で答えました。代理店の担当者には、同じ一枚の「できないこと」の行を指で示してもらうことにしました。
ほかの業種なら
A社 業務用の洗浄機
| 落ちやすい条件 | 下見で確かめてから |
|---|---|
| あいまい→確かめられる(例) | かんたん操作→操作は三つ |
| 書いておく「できないこと」(例) | 大量処理、記録の自動保存 |
B社 建材
| 落ちやすい条件 | 構造と下地を確かめてから |
|---|---|
| あいまい→確かめられる(例) | 施工性抜群→留め具は一種類 |
| 書いておく「できないこと」(例) | 合わない構造、寒冷地での特定の施工 |
C社 業務用のソフト
| 落ちやすい条件 | 今の受注の流れを伺ってから |
|---|---|
| あいまい→確かめられる(例) | すぐ使える→初日の設定は半日 |
| 書いておく「できないこと」(例) | 自社独自のつくり込み |
D社 計測の機器
| 落ちやすい条件 | 部品と検査条件を確かめてから |
|---|---|
| あいまい→確かめられる(例) | 高精度→測れる範囲と誤差の目安 |
| 書いておく「できないこと」(例) | 範囲外の大きさ、特定の材質 |
A社のほかは、考えるための仮の例です。
選んだ業種は、ほかの記事でも最初に開きます(この端末の中だけに残します)。トップでも選べます。
理解を確かめる
問1「製造は止めません」と言い切るのと、「下見をして、止めずに入れられるかを先にお答えします」と言うのとでは、どちらがよいでしょうか。答えを見る
後者。条件が残り、顧客が知りたい「うちの場合はどうか」に答えています。
問2ある相手の一番の気がかりに答える機能がありません。資料にはどう書きますか。答えを見る
言葉で埋めず、「できないこと」として正直に書きます。商品に手を入れるかは、要望の件数を添えて開発と経営に回します。
やってみる
自分の会社の一件で
型06 約束を書く
型6「約束を書く」。約束の一文に、当てはまる条件が入っているかを確かめます。資料の中のあいまいな言葉を三つ選び、確かめられる言葉に置きかえます。最後に「できないこと」を三つまで書きます。
- 誰に
- どんな場面で
- 何と比べて
- 約束すること(条件つきで)
- 裏づけ
- 口で言う形
- 約束しないこと
本では
本では 『選ばれる理由のつくり方』
この話が、人のあいだでどう進んだか。
第11章。衛生管理を急ぐ工場の資料をつくろうとして、答える機能がないと分かった場面があります。第7章には、「約束しないこと」を誰が決めるかの表があります。
本について →本の該当箇所:第11章 第6・7節、第7章 第6・8節